このサイトでは、「エロイカより愛をこめて(From Eroica with Love)」を題材とした、英語での厖大な二次創作群を翻訳しています。サイト管理者には原作者の著作権を侵害する意図は全く無く、またこのサイトにより金銭的な利益を享受するものでもありません。私が享受するのは、Guilty Pleasure - 疚しい楽しみ-だけです。「エ ロイカより愛をこめて」は青池保子氏による漫画作品であり、著作権は青池氏に帰属します。私たちファンはおのおのが、登場人物たちが自分のものだったらいいなと夢想 していますが、残念ながらそうではありません。ただ美しい夢をお借りしているのみです。

2011/12/10

『警告:女体化注意・裏の裏篇』

  
  
BasilLeavesです。台無しにするために生きています。




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Bが軽率な口笛を吹いた。「すげえ別嬪じゃん・・・」

「やめろよ!不謹慎だぞ!」僕は小声で同僚をたしなめながら、目のやり場に困っていた。自宅で美人は見慣れているはずなんだけど、なんというか、正面から見られなかった。僕だけではなく、一生懸命目を逸らそうとしているのはその場にいる全員が同じだった。

ほっそりとした優美な姿が、微風のように部屋に滑り込んできた。背は相変わらず高い。僕よりずっと高い。ただ手や手首や首筋の感じが以前とは全く違っていて、優美なまろやかさが増し、いままでにはなかったたおやかさと、不用意に触れると傷つけてしまいそうなかそけさが、この人の現在の状況を物語っていた。いつも力強い魅力で周囲を魅了していたこのひとが、今は自分の身を消してしまいたいとでも言いたげに視線を伏せていた。その慎ましやかな挙措には、なにかたまらなく歯がゆくなるような魅力があった。

体調はまだ良くないようだった。椅子に座ろうとしてうっかりつまずいた瞬間、部屋にいた全員が思わず腰を浮かせて手を差し伸べ、彼女・・・、彼?・・・そのひとを助け起こそうとした。手を取り、腰を支えたのはすぐそばにいた同僚のZだった。助け起こされたその人はつと顔をあげ、上目遣いにZを見上げた。その瞳は悩ましげに揺れていて、視線を合わせていない僕らですら魂を奪われそうになった。僕の後ろで、同僚のDとEがどすんと椅子に腰を下ろす音が聞こえた。若いだけあって立っていられなくなったらしい。正面から間近でみたZはどうだったんだろう?

もともと魅力的な人ではあった。ただ、その美しい相貌から男性的なすべてがすっかり失われていて、残っているのは純粋に女性的な美、それも健康的であったり挑発的であったりする種の美ではなく、傍らのすべてのものの保護欲をそそるようにかそけく繊細でいて、それでいて、ただ踏みにじるためだけにこの花を手折ってやりたいと思わせるような、受動的な美があった。女性になってしまったクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐。彼は僕たちの予想を光速でぶっちぎった三光年先の曲がり角を斜め上に曲がってそのまま消えていく後姿に誰も追いつけないよ待ってくれ、と言いたくなるほど、圧倒的に美しかった。

ごくり。部屋にいる全員がつばを飲み込んだ音が聞こえた。

僕たちがこの部屋に集められた理由は他でもなかった。少佐はとある生体兵器研究所に忍び込んだ際に、血清が完全には開発されていない新種の病原菌に感染した。この病原菌は感染力と発症率は低いものの、一旦発症すればエボラ出血熱とほぼ同様の経緯を経て100%死亡することが知られていた。少佐は直ちにフランス国境近くにあるドイツの病原体研究所へ送られ、開発中の血清を投与されるしか生存の道がないと説明されたとたんに失神した。気を失ったままの少佐の腕に、血清の点滴が容赦なく打ち込まれた。開発中の血清は女性には大きな副作用がないことが確認されているが、男性には無視できない副作用があった。ホルモンバランスが完全に女性化し、性転換してしまうのである。人工的な性転換は通常2年程度の時間をかけて行われるが、この血清ではほぼ三ヶ月でそれが完了する。血清は少佐にきわめて良好に効いたらしい。そのままであれば女性としての後半生を送ることになるわけだが、動物実験では奇妙な結果が得られていた。生物としてのメスの行為、つまりオスとの性交、妊娠、出産を終えると、速やかに原状に回復する場合があるのである。

血清の研究者たちのレジュメにはこうあった。適切なオスと交配させた場合、自然な性交による妊娠・出産を経て原状に回復する率は70%程度、これが人口受精による妊娠の場合には、原状回復率はなぜか30%程度まで落ちる。またつがいの相性がよく、性交中に十分な満足を得ていた場合には原状回復率は95%を超える。これはサルによる実験結果であった。

少佐は男性への復帰を希望したが、被験者となることに同意するには長い長い長い長い長い時間がかかった。しかしとにかく、最後には同意した。協力者の選択に当たっては双方の血液のある種の型による組み合わせが重要で、検査によって「適切なオス」を選別する必要があった。NATOの任務遂行中の事故であったことから、同任務に当たっていたメンバーが本日極秘に招集され、血液検査を受けた。検査結果はすぐに判明し、該当者が複数の場合は被験者本人に選択させるということになっていた。

結果如何によっては、任務の一環とのお墨付きで、この美女とやってやってやりまくれるんだ・・・。もと鉄のクラウスだけど。

部屋にいる男たちが考えていたことは、全員同じだったと思う。・・・僕は妻の顔をちらりと思い浮かべて許しを請うた。仕事だから。ごめん。フランス側からも数名が召集されてこの場にいた。Qもいた。目がぎらぎらしていた。

眼鏡をかけた若い研究医が立ち上がり、話し始めた。

「血液検査の結果が判明しました。適合者は複数でした。手っ取り早くこの場で発表します。」

少佐が視線を伏せた。全員が緊張したのがわかった。

「全員の血液が、被験者には有効と判定されました。」

全員が殺気立った。なんてこった。全員がライバルか。少佐は誰を選ぶんだ?医師が被験者に促した。

少佐は顔を上げ、出席者の顔を見渡して絶望に満ちた声を絞り出した。

「なぜ・・・、なぜあいつが来とらん・・・?」

口調に相応しくない、甘い女性の声だった。

伯爵は女性には立たないそうです。連絡しましたがあっさり断られました。あたし、切らずに残しておいてほんとに良かった!」

Gがグロスを載せすぎた唇を舐めてにまにま笑ってそう答え、ゆらりと立ち上がった。それにつれて全員が席を立ちあがった。

少佐は顔色を失い、椅子に崩れ落ちて失神した。



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<つづく> …と、言いたいところだが、さすがに続きませんなこれは…

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