このサイトでは、「エロイカより愛をこめて(From Eroica with Love)」を題材とした、英語での厖大な二次創作群を翻訳しています。サイト管理者には原作者の著作権を侵害する意図は全く無く、またこのサイトにより金銭的な利益を享受するものでもありません。私が享受するのは、Guilty Pleasure - 疚しい楽しみ-だけです。「エ ロイカより愛をこめて」は青池保子氏による漫画作品であり、著作権は青池氏に帰属します。私たちファンはおのおのが、登場人物たちが自分のものだったらいいなと夢想 していますが、残念ながらそうではありません。ただ美しい夢をお借りしているのみです。

2011/12/07

『警告:伯爵女体化注意・表篇(3)』



『警告:伯爵女体化注意・表篇(2)』の続きです。








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疑問が氷解したからといって、どうなるものでもなかった。第一に、そんな微妙な話は上司に説明できない。第二に説明できて上司が納得したとしても、もはや打つ手がない。Gの仮説が正しいとすれば、少佐が今の伯爵を追えば追うほど、伯爵はそんな少佐から逃げていく。おそらく伯爵が考えているのはいかなる手段を使ってでもとっとと男の体に戻り、もういちど少佐に言い寄ることなんだろう。その前にぼくの上司の意外と繊細だった精神が崩壊していなければ。

上司の様子は平常に戻りつつあるように見えた。職場でおだやかな笑顔を浮かべて指令を出し、任務を遅滞なく遂行し、部下を怒鳴りつけなくなった。ということは・・・。僕たち部下にはよく分かっていた。つまり上司はまだ全然普通じゃない。

伯爵が研究所から失踪したという知らせが入ったのは、そんなときだった。『治療』を開始する直前だった。

諜報部門というのはプロである。あっという間に居場所をつきとめた。パリ郊外の、伯爵が所有するメゾンに彼らはいた。彼ら、そう、伯爵とQ。伯爵が誘ったにちがいなかった。多分今の繊細な伯爵には、衆人監視とかわらない環境の研究所でQと初めての交渉を持つというのに耐えられなかったんだろうと思う。それくらいなら、Gに教えてもらわなくてもわかった。

ただ生物兵器として開発された病原菌の血清の被験者である伯爵は、いまのところ彼の身体そのものが国家機密で、ドイツ国外に出国されるのはあまり歓迎されない事態だった。ことの成り行き上、伯爵のケースはBNDではなく、NATOボン支部がそのまま預かっていた。となれば、失踪先から連れ戻すのも僕らの仕事だった。少佐は僕だけを連れて出掛けた。枯葉の散る森の奥のひっそりしたたたずまいのメゾンには、伯爵のベントレーとルイのシトロエンの、2台の車が並んで止まっていた。僕たちはボンから走らせてきた車をその横に泊めた。

エントランスのドアには施錠もなく、少佐はほとんどそれを蹴破らんばかりの勢いで開け、入り込んだ。正面の広い階段から、緩やかなカーゴパンツを穿いてシャツのボタンをひとつもとめずに羽織っただけのQが、ちょうどゆっくりと降りてくるところだった。Qは階段を下りきって、少佐に挨拶をした。

「やあ、エーベルバッハ少佐。ちょうど開通式が終わったところだよ。」

驚いたことに、少佐はいきなりQに殴りかかった。Qはそんなこともとっくに予想済みのようだった。さっと体を逸らせた。

「本人がそう言ったんだがね、さっさと済ませようってね。こんな体、犬にでもくれてやるって泣いてたよ。じゃあ私は犬なのか?と聞いたら、そのとおりだと答えた。私が犬ならきみは雌犬だなと言ってやったら、ああそうだと答えて、余計に涙を流した。その泣き顔があんまりそそったから、まずは顔を見ながらやることにしたんだよ。オーソドックスに正常位で。」

少佐は蒼白になっていた。

「それがとりあえず初回だな。きつくて狭くてちゃんと出血したよ。それから、雌犬なら雌犬らしくやってやろうと、四つんばいにさせた。彼のいつもの方に入れようとしたら、そっちじゃない、そっちじゃないんだとわんわん泣かれた。それでもう我慢できなくなってそのままやってしまったよ。どっちの味も悪くなかったね。彼、すっかり筋肉が落ちてて、全然抵抗できないんだ。女性並みになってるよ。ああ、女なのか、実際。」

僕は上司が発狂するんじゃないかと思ってそっと横顔を見た。目の焦点が合っていなかった。発狂ではなく、卒倒するのかもしれなかった。

「どっちもいい感度だったな。さっき何度目かの気をやって、まだ気を失ったままだ。顔を見たいなら見てきてもいいが、手は出すなよ。忘れていないとは思うが、伯爵が選んだのは私だ。」

Qはそう言うと、屋敷の奥へ消えた。上司は放心した顔のまま立ち尽くしていた。僕たちの任務からすると、さっさと上に上がって服を着せて、研究所に連れ戻すべきなんじゃないのかな。でもそう口に出して上司に言う勇気がでなかった。

Qはすぐ戻った。銀のトレイの上に赤ワインとバゲットとチーズ、それからチョコレートボンボンをいくつか載せていた。

「ボンボン・ア・ラ・リキュールが主食らしいぞ、私の姫君は。どいてくれ、食べたら続きだ。」

階段を登るQの後姿を、上司は黙って見送った。生まれて初めて、上司のけつ・・・失礼、尻を蹴っ飛ばしたくなった。何ぼぉっとしてるんですか!少佐!

「お待ちください!」

僕は大声でQを制止した。

「当方の事情はよくご承知のことだと思います。こういったことでそちらの機関と衝突するのは、できれば回避したく考えています。騒ぎが大きくなる前に、収拾に向けてご協力願えないでしょうか。」

それに、あんたもとりあえず最初の目的は達成したはずだ。僕はそれを口に出さなかった。

Qは面白そうな顔をして振り返った。そして僕と上司の顔を無遠慮にじろじろ見比べた。

「所属の話を持ち出されては仕方がないな。では、姫君がショコラを食べたら服を着せて下へお連れしよう。その奥の客間で待っているがいい。」

スカした野郎はどこまでもスカしていた。だが僕たちはとりあえず待つことにした。僕は客間のソファに沈み込んだ。上司は立ったままだった。僕は慌てて立ち上がった。

しばらくして、上階から物音とあけすけな嬌声が聞こえた。いたたまれなかった。上司の顔が見られなかった。

「食っとるのはチョコレート菓子だけでもないようだな。」

上司がぽつりとそう言い、煙草を咥えて火をつけようとした。カチリ。ライターに火がつかなかった。ガス欠だろうか。上司はカチカチとせわしなく親指を繰った。取り次いだ僕だけが知っていることだが、無骨な持ち主にはあまり似合っていないその細く優美なライターは、伯爵から少佐への何年か前のクリスマスプレゼントだった。上司はたぶん僕とほぼ同時にそのことに気付いたんだと思う。いきなりライターを床にたたきつけた。

毛足の長いじゅうたんがライターを受け止めた。

声は止まなかった。明らかに悦ばされている声がだんだん切なげな喘ぎになり、次第にのぼりつめていく様子が手に取るように感じられた。僕は窓の外を眺めて、必死で気を紛らわせようとした。喘ぎは追い詰められて救いを求めるようにその間隔を短くし、最後に一声、絶え入るような悲鳴を残して、あとは静寂に戻った。

「おれはあいつと同じ車には乗らんぞ。おまえ、あの車に乗せて帰れ。」

上司は窓から見える伯爵のベントレーを顎で指して言った。

「少佐、僕あんな大層な車運転できません。」

今のあなたにボンまで400キロも一人で運転させられるものですか。僕の本音はそこだった。

「馬鹿者!車の運転なんぞどれでも同じだ。大きさが気になるんなら、ピックアップトラックでも運転してると思え。」

「値段が違います!」

押し問答を繰りかえしていると、階段から物音がした。

「きみたちの車に乗るそうだよ。」

Qの声がした。伯爵を抱き上げて客間まで連れて来たのだった。少なくとも服は着せていた。Qは嫌味な笑みを浮かべて、ぐったり汗ばんだ伯爵の体を少佐に押し付けようとした。少佐は目に見えて狼狽し、一歩後ろに下がった。

「腰が抜けて、立って歩けないそうだ。車まで抱いていってやってくれ。」

僕の上司は信じられないことに、まるで救いを求めるように僕の顔をちらりと見た。少佐。僕、身長167センチです。無理です。

少佐は絶望的な目をして、Qから伯爵の体を抱き取った。





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『警告:伯爵女体化注意・表篇(4)』に続く・・・

 
 
 

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