このサイトでは、「エロイカより愛をこめて(From Eroica with Love)」を題材とした、英語での厖大な二次創作群を翻訳しています。サイト管理者には原作者の著作権を侵害する意図は全く無く、またこのサイトにより金銭的な利益を享受するものでもありません。私が享受するのは、Guilty Pleasure - 疚しい楽しみ-だけです。「エ ロイカより愛をこめて」は青池保子氏による漫画作品であり、著作権は青池氏に帰属します。私たちファンはおのおのが、登場人物たちが自分のものだったらいいなと夢想 していますが、残念ながらそうではありません。ただ美しい夢をお借りしているのみです。

2012/04/25

FEET OF CLAY 06 Chink In The Armor - by Margaret Price

 

 
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Chink In The Armor - 鎧の亀裂




AとZが戻ってきた時、少佐はエレベーターの近くの待合室へ向かっているところだった。自分たちが席をはずしている間に上官が心の平静を取り戻していることを確認し、Zは、胸をなでおろした。いつもどおりの気短な少佐にもどったように見えた。


「コーヒーをお持ちしました。」Zはそう言って、紙コップを手渡した。


少佐は黙ってそれを受け取り、待合室へ足を向けた。医師と看護師が病室にきたため、部屋を出たのだった。医師が状態を検査し、看護師は包帯を交換して伯爵を着替えさせた。クラウスは待合室の椅子に座り込み、きつく目を閉じた。部下たちから見ても、少佐は疲れ切っているように見えた。これまでの数えきれない任務の最中には、彼らは肉体の限界まで自己を駆り立ててゆく少佐しかみたことがなかった。


「よろしければ朝食もどうぞ。」Aがそう言い、手に持っていた紙袋を差し出した。少佐が黙って食事をとっているあいだ、Aは簡潔にその後の状況を報告した。Gの報告によれば、基地から派遣されたアメリカ人たちはGとほぼ同時に山荘に到着し、現地の警察と合同で調査を行なっているということだった。見たところ道屋やら脱走兵たちは、基地の外塀の一部を破壊した脱走のためのルートを残しており、基地関係者はこれまでにいくどかあった基地への不法侵入を彼らが手引きしていたのではないかと疑っていた。


空軍基地はNATOの施設を租借したものであったため、BがNATO側の担当者として彼らとコンタクトを取るのに何の問題もなかった。Aからボーナムに入れた連絡の返事はまだなかった。おっつけ連絡が来るのに間違いはない。イングランドはまだ夜明けにもなっていなかった。


Aが去ると、少佐とZは黙り込んだまま座っていた。少佐がとうとう口を開いた。「他の連中はエロイカがおれの山荘で何をしていたと思っとるんだ?」


Zはさっと顔を上げた。返答を帰す前に、様々感情が彼の眼の奥に点滅した。「A先輩が連絡してきた時には、あなたの山荘に何か悪戯か嫌がらせを仕掛けに入ったんだろうと推測していました。


クラウスは頷いた。「では、Gがおれのクローゼットにエロイカの着替えを見つけた時には?」クラウスはZの表情の変化に目を止めた。Zは驚いてさっと赤面し、すぐに何事もなかったかのような顔に戻った。この新米は良くしつけられていた。


「もしそうだとすれば、」Zはゆっくりと返事をした。「フィレンツェでやったような悪戯をまたやったんだなと思います。」


少佐は椅子に背を預けて目を閉じた。思い出が彼の頬をふと緩ませた。それは彼と伯爵が密かな恋人同士になるまえに起こった出来事で、少佐が泥棒を自分の人生から追い払おうと躍起になっていた頃のことだった。NATOは任務のためにエロイカと契約し、ある不幸な成り行きによって少佐は伯爵は同室をシェアするはめに陥った。エロイカはもちろんこの機会を十分に楽しみ、自分の身の回りの品を少佐の部屋のあちこちにばらまいた。少佐はあちこちで怒鳴り声を上げ、もう少しで伯爵を殺すところだった。伯爵を窓の外に放り出す代わりに、伯爵の身の回りの品を窓の外に投げ捨てることでその時は終わった。


「おれたちの仲を疑ったことはなかったのか?」クラウスはついにそう尋ねた。


「いえ、少佐。」


「おまえはとうとう鉄のクラウスの鎧にほころびを見つけたというわけだ。」


Zは椅子の中で居心地悪げに身じろぎをした。彼はすでに上官のありえない一面を目撃していた。彼がこれまで知っていた上官は私生活をひた隠しにし、私的な友人を持つことを極端なまでに避けていた。「ぼくがなにか申し上げるべきことでもありません、少佐。」


「くそっ、Z。おれだって聞きたくて聞いとるわけではない。」少佐は吠えた。


「僕だって同じです。」Zは反射的に答えた。彼は少佐のきつい目つきをしっかりと見つめ返した。「どのくらいになるんですか?」


クラウスは瞬きをし、突然反撃をよこした部下を怒りを込めて怒鳴りつけようとした。ちがう、これはおれが始めた話だ。「十年と三ヶ月だ。」


Zはぽかんと口を開けた。かれはせいぜい何ヶ月かという答えを予想していた。「少佐、だから私生活を明らかになさってなかったんですね。」彼はゆっくりとそう答え、視線を下げた。


「おれの言いたいことがわかるな、Z。」


「少佐。あなたのチームに配属されたとき、何かの間違いではないかと思いました。自分がNATO情報部で最高の情報将校の部下としてふさわしいとは思えなかったからです。アルファベットの一員となったその日からずっと、ぼくはあなたを尊敬し、賞賛しています。」 Zは視線をさっと上げ、自分を見つめている上官の目をひるまずに見つめ返した。「それは今でも変わっていません。いまここでサハラ砂漠を裸足で横断せよと命じられても、それは変わらないでしょう。」 Zが驚いたことに、少佐の唇の両端が微かに持ち上がり、微笑を形作った。


「礼を言うぞ、Z。」クラウスは穏やかに言った。それは部下をさらに驚かせた。少佐は視線を廊下へ逸らせた。




「少佐、ほかに誰が・・・」


「知っているか、とい意味か?」


Zはうなずいた。


「伯爵の部下のボーナムと、おれの執事だ。」クラウスは向き直り、若い部下のほうをじろりと見た。「そしておまえだ。今後はな。おれが把握している限り、知っているのはこの三人だけだ。」


三人目にうっかり見られるとはな。なんてザマだ。


「少佐。僕はあなたの信頼を裏切るつもりはありません。」


「いいだろう。ではここにいる間はエロイカの保護を頼んでいいか。」


「もちろんです。」


Zはやっと胸をなでおろした。チームの一員が病院に駆け込んだときに、少佐がすでに到着しているという状況は別に珍しいことでもなかった。初期調査と聞き取りを少佐自身が行うのが常であり、その後も負傷者の面倒を見るなどという仕事は部下たちに割り振るのが普通だった。


被害者がエロイカで、場所が少佐自身の山荘だったという事実が、少佐の眉を動かす程度には意外だったのかもしれなかった。そして犯人たちがNATOの施設から脱走した男たちだという事実が、少佐がこの問題に全面的にかかわるに値する理由を強化していた。


Zは、少佐がまぶたに手をやり、背もたれに体を預けたのに気づいた。少佐は明らかに疲れきっていた。肉体的にも、精神的にも。Zは咳払いをして少佐の注意を惹き、時計を見ながら言った。「半時間後に起こしましょうか、少佐?」






  

2012/04/24

FEET OF CLAY 05 Falling Apart - by Margaret Price

 

 
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Falling Apart - 砕け散った世界




クラウスにとって暴力は日常茶飯事だった。自身の存在価値の一部ですらあった。この世の醜い一面は見慣れてきた。世界の暗黒面を知っていた。彼はそれとともに、そしてその中で生き延びてきたのだった。もう何十年も、死と暴力ととのあいだに折り合いをつけながら過ごしてきたのだった。だがドリアンはそうではなかった。彼の魂は美を求めて叫び声をあげていた。


クラウスはドリアンが緊急医療用のヘリで空輸されてゆくのを見上げていた。脱走兵たちは救急車で運び出されていった。救援が到着するまでの間、クラウスはドリアンの美しい肉体を蹂躙した男たちを殺すか、あるいは回復しないような障害を与えてやりたいという衝動と戦っていた。彼はその後、二人組の男がその週の始めに読んだ報告書の中の男たちであることに気付くことになった。彼らはNATOのGeilenkirchen空軍基地から脱走した修理兵だった。彼らは祖国を離れて、旅の恥はかき捨てという気分のまま、無茶な暴走に歯止めがかからなくなったのだった。


脱走兵たちは治療後には米国へ戻され、法の裁きを受けることになる。同時に彼らは軍法会議にかけられ、その後は監獄での長い時間を過ごすことになるだろう。


クラウスにとってそんなことはどうでもよかった。そんな先の話はいい。彼の胸中から離れないのはたった今、現在の話だった。クラウスが病院について一時間もしないうちに、部下たちもまた到着した。


待合室に部下Aが現れた時、クラウスは自分で自分を笑った。真夜中にも関わらず部下はやってきた。上官の司令を受ける準備を整えて。少佐はなぜこんなことにも思い到らなかったのかと自分を訝しんだ。


「少佐?」上官からの命令が即座に下されないと見て取るや、Aは声を掛けた。


クラウスは深く息を吐いた。「煙草はないか。」彼は疲れた口調で言った。それと、なにか強い酒と。彼は立ち上がり、部下を連れて部屋の外へ出た。


Aがこんな少佐を見ることは滅多になかった。鉄のクラウスが精神的な衝撃を受けているとは。もちろん、静寂を求めて自分の別荘に足を踏み入れたら、エロイカが不審者に強姦されている最中だったというのは、衝撃を受けるには十分な出来事だったろう。


「基地のアメリカ軍と協力体制に入るべきでしょうか?」Aは尋ねた。


クラウスはそれを考えながら、時間をかけて煙草を吸った。「いや、それはBにやらせよう。やつはそういう任務に向いとる。きみには全体の指揮をとってもらいたい。これは外交的な悪夢になるだろうな。」彼はそこで言葉を切り、それから突然尋ねた。「ボーナムとは連絡をとることはあるのか?」


「はい。知らせるべきでしょうか?」


クラウスは頷いた。ボーナムは、ドリアンと自分のことを知るたった二人の人間のうちの一人だった。もう一人は少佐の執事だった。執事は二人が逢う前の山荘の準備を担当していた。クラウスには執事の態度が意外だった。彼は執事が直ちに父親にそのことを知らせるだろうと思っていたのだ。だが彼はそうしなかった。実際には、彼は伯爵に対しゆるぎない敬愛の情で応える、非常に信頼できる腹心となり得ることがわかった。


「あまり詳しいことまで言わなくて言い。」彼は驚くほど落ち着いた口調で言った。「伯爵が怪我をしたとだけ伝えておけ。詳細は到着してからでいいだろう。」


「了解しました。」Aはほんのしばらく少佐を見つめた。「山荘へ誰かを派遣しましょうか?」


この質問に対する返答には長くかかった。上官の指示を待つ静寂の中で、不審者が侵入したときに伯爵は山荘で何をしていたのだろうとAは考えた。エロイカは、またなにか上官に対する悪戯を仕掛けるために山荘に入り込み、そこで脱走兵たちに襲われたのだろうか。事実が明らかになっていない現時点では、それが部下たちの推測だった。


「そうしてくれ。Gが妥当だろう。家政婦ということにしておけ。警察の目を引かんから、そのほうが動きやすい。」


「了解しました。」


「警察の事情聴取に応じんとな。」少佐は疲れの滲んだ声で言った。「その間しばらくここを離れる。」


Aはうなずき、下された指令を実行すべく立ち去る前に、もう一度少佐の'顔を見つめた。


クラウスはAを目で見送り、今そこで煙草をもみ消したばかりの塀に寄りかかった。それから次の一本に火をつけ、腕を組んで警察が彼を呼びに来るのを待った。事情聴取が始まり、終わった。彼は自分の世界の崩壊が始まるのを感じた。






* * *






「グローリア卿はあと数時間は目覚めないはずです。」医師がそう告げた。


クラウスはうなずいた。自分がこの目で目撃した出血量だけでも、ドリアンがその事件の間にどれほど深刻な障害を受けたかがわかった。攻撃を受けた部分に明らかな裂傷があっただけではなく、挿入された異物と拳によって内部がひどく損傷していた。全身に受けた攻撃にもかかわらず、奇跡的なことに顔には一切の裂傷がなかった。だが酒瓶で殴打された頭部はそうではなく、縫合を必要とした。また、昏睡状態に陥っているのはその頭部の打撲によるせいもあった。


クラウスが病院に到着したばかりの時、ドリアンは内部の裂傷を縫合する外科手術の最中だった。事情聴取を終えたクラウスが病院に戻ると、ドリアンは手術を終えて集中治療室で眠っているところだった。


クラウスは尋ねられるとわかっていた数々の質問を甘んじて受けた。心配していたほどの難作業ではなかった。彼の山荘はしらみつぶしの捜索を受けており、捜索が終わる頃の山荘はどんな状況になっているだろうかと考えた。あの呪うべき下種どもの罪状を確定するのに、次の世紀までかかって証拠を集めてもまだ足りないというのか。


病院へ戻るなり、クラウスは伯爵の状態を説明できる担当者を捕まえた。彼は伯爵はNATOの外部契約者であると偽り、伯爵がドイツ国土に滞在している間の身元責任者は自分であると告げた。それから、伯爵の外傷に対して医師が施した治療の内容に、黙って耳を傾けた。




* * *




何者かが近づいてきたとき、クラウスは待合室でうたたねしていた。その何者かは、ドリアンが集中治療室から病室へ移ったとクラウスに告げた。伯爵は病室でぼんやりと目覚めたが、麻酔のせいで自身の身に何がおきたかはっきりと理解するほどに明晰な意識は取り戻さなかった。


案内されて伯爵の病室に向かいったクラウスは、自分でも驚くべきことに、何も考えたくないと感じている自分に気づいた。事実を認めたくなかった。彼はあらゆる種類の暴力と日常をともにしてきた。あやうく命を失う破目に陥ったことも一度や二度ではなかった。だがこんな気分になったことはこれまで無かった。


彼はドリアンの病室の前で数分間立ち止まり、ドアの内側に見出すかもしれないものへ心を準備した。病室へ入ると、そこには打撲の跡に包帯を巻かれた伯爵が、体をこちらに向けて寝息を立てていた。彼は楔形の抱き枕を背に当てて、その姿勢を保っていた。体の正面にもいくつかの枕を置いて寝姿を固定していた。


クラウスは枕元へ近づき、伯爵を見下ろしながら顔にかかる髪を優しくかき上げた。ドリアンの顔には殴打によるあざが残り、唇は腫れていた。頭には包帯が巻かれていて、その下には縫合を受けた裂傷あるはずだった。手首には縛られていた紐に対する抵抗の跡が擦過傷として残っており、同じものは足首にも残っているに間違いなかった。


クラウスは椅子を引き寄せ、ベッドの脇に座った。彼は座ったまま、伯爵の顔を長い間見つめ、十年前に何が起こったかを思い出した。ドリアンにこの身を与えたあの夜の驚きを。


記憶にある限り初めて鉄のクラウスはついに我を失い、嗚咽を始めた。




* * *




クラウスは数分後に平静を取り戻そうとつとめた。ドリアンは彼が自制心を失っているところなど見たくないだろう。彼は手の甲で涙をぬぐうと、ハンカチを取り出して鼻をかんだ。そのとき、誰かが背後で息をを飲む気配に気づいた。しまった!


「少佐?」おどおどした声が続いた。


Zか!なんてこった!


クラウスは、自分が泣いていたのを取り繕うすべが無いことを悟った。目が赤く、頬には涙の跡があるだろう。彼はドアの方へゆっくりと振り向き、茫然とした部下が信じられないというように目を見開いたまま部屋の入り口に立ち尽くしているのに目をやった。いたたまれない静寂が続いた。双方がどう口を開くべきか判らずにいた。


クラウスがついに深く息を吐いた。「なにか用か?」彼はできる限り平静な口調でたずねた。


Zはどもりがちに答えた。「は、はい。A先輩に言われてここに来ました。ぼくがここに残れば、少佐は・・・」彼の言葉はそこで途切れた。そしたら少佐は忌々しい伯爵の隣にずっと座っていられずにすむ。どうしてこんなことに。いったいいつから?


「そうか。」クラウスは年若い部下を見つめた。


その凝視がZに北の凍った平原を連想させた。彼は神経質に咳払いをし、小さく一歩前に出た。「少佐。これは高度な機密に属すると思われます。」彼は口を開いた。「もし機密保護のためにはぼくをアラスカに送ったほうがいいと思われるなら・・・」彼は言葉を続けられなかったが、意味するところは明らかだった。


少佐は忙しく瞬きをした。「その必要はない、Z。」彼は視線を戻し、眠ったままのドリアンを見下ろした。


Zはほっとしたようにため息をついた。「少佐。」彼は恐る恐る言った。「ぼくが伯爵を見ていますから、その間に睡眠をおとりください。」


「後でいい。目が覚めたときに、そばにいてやりたい。」


「了解しました。」それ以外の何を言うべきか思いつかないうちに、後ろのドアが開いた。幸いなことに彼はまだドアの前にたっており、ドアは彼の背にぶつかって止まった。Zは少佐をしっかりと見つめてから、身を翻してドアの外へ出た。外にいたのは驚いた顔のAだった。


「Z、なんで交代していないんだ?」


「少佐から、半時間後に起こしてくれと言い付かりました。」彼はそう言ってドアを閉めた。


Aは瞬きをして頷いた。上官の思惑を推測するのは賢明ではなかった。


「少佐にコーヒーお持ちします。」Zはそう言って、下のホールへ降りようとした。


AはZを見て胸の中でうめいた。普段ならベッドにいるべき時間だ。出来の良い妻に恵まれたことに感謝しなければ。夜の自宅で電話を受けた時もグラディスは黙ってスーツを用意し、ネクタイまで合わせてくれた。一段落ついたらなにか埋め合わせを考えよう。


「ぼくもコーヒーを飲むとしよう。」Aはそう言ってZのあとに続きながら、伯爵の病室にちらりと目を遣った。「少佐もたぶん、夕食はとってないだろうな。」彼は何の気なしにつぶやいた。


Zはエレベーターのボタンを押して答えた。「コーヒーと一緒になにかお届けします。」


二人の前で、エレベーターのドアが開いた。


「これはきっと大騒ぎになるぞ、Z。」


Zは彼を見つめ、深いため息をついた。あなたには半分も判っていない。




   

2012/04/23

FEET OF CLAY 04 Magnum Force - by Margaret Price




 
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作者から:ちょっとやり過ぎだってのは認めざるを得ないですね。でもこのまま読み進んできただければ、状況はこの第四章からいい方向へ向かいます。






Magnum Force - マグナムの威力


任務に終日集中することは難しかった。実のところ、昨年あたりから伯爵との逢瀬が近づくたびに、それが難しくなってきているのだった。特に今回は少佐の注意力散漫にもそれなりの理由があった。かれはちょっとしたサプライズを計画していた。一日の終わりに彼は不機嫌な唸り声を上げて部下たちを先に帰らせ、全く急いでいないような振りを自分に強いながら車に向かった。


何もかもが順調だった。少佐の計画を邪魔するような急な任務が入ることもなかったし、部長がにやにや笑って彼を呼び寄せ、少佐の私的生活について何やら意見を述べだすといったこともなかった。道路までが普段より空いていた。本来であればクラウスは早めに山荘に到着してドリアンを驚かせてやりたかった。だが仕事は仕事で、それを放り出していくわけにはいない。エロイカに逢うために早退するなどとは、もちろん口が裂けても言えなかった。周囲は未だに少佐がエロイカの髪の毛一本すら毛嫌いしていて、さっさとくたばることを願っていると考えていた。


関係が始まった最初の数カ月のころは、鉄のクラウスとエロイカを演じるのはむしろ簡単だった。第三者の目がある所では用意されたキャラクターを演じ続ければよかった。だが山荘では彼らはクラウスとドリアンであり、恋人たちだった。ドアを閉じると同時に、二人は仮面を脱ぎ捨てた。このことが始まってから、あと数週間でもう十年になるのだった。だが今でもなお、クラウスは時折このことが信じられないことがあった。彼はあのとき山荘で起こった奇矯ななりゆきを思い出した。あの事件が二人に仮面を脱がせ、クラウスが真のドリアンを知るきっかけを与えたのだった。おれのドリアン。


山荘についた頃にはほとんど日が暮れていた。山荘の窓すべてに明かりを見て、クラウスは眉をひそめた。ドリアンは先に到着したときはいつも、窓辺に燭台を置くのが普通だった。暖炉の火を入れることもあった。続いてクラウスは、ドリアンが車の向きをいつもとは逆に停めているのに気づいた。


くそっ。


それは何年も前に取り決めた合図だった。伯爵が一人ではない場合には、車の向きを逆にしてクラウスにそのことを知らせる。中にいる何者かの正体を確かめないうちは、鉄のクラウスの仮面は脱げなかった。


クラウスは車を降り、伯爵の車に向かった。むき出しの地面に残る足跡から何人いるかが推定できるといいが。そこで彼は、伯爵が荷物を下ろす際に故意に地面に落とした絹のスカーフを見つけた。彼はそれを拾い上げた。クラウスのしかめ面がいっそうひどくなった。そのスカーフは一年目の記念日にクラウスからドリアンにプレゼントしたものだった。十年近く前の話だ。クラウスがそのスカーフを自分で選び、買ったのだ。ドリアンは何度も繰り返し、私の宝物なんだよと微笑んだ。


ドリアンがなんらかの意図なしにこれを地面に落とすことはありえない。何かが…


クラウスは山荘をさっと振り返った。彼の目は二階のベッドルームに釘付けになった。その窓もまた、煌々とした明かりを灯していた。かれはマグナムを取り出し、一階の窓を覗き込みながら入り口ににじり寄った。彼は山荘の周囲を一周し、すべての窓を確認した。一階には誰も居ないことは確実だった。ドリアンを含めて。


クラウスは静かにドアを開け、体を滑り込ませた。ロフトからの声を聞きつけ、階段へ近づいた。その声の内容を理解した時、彼は激怒のあまりほとんど卒倒しそうになった。ドリアンが叫び声を上げ、クラウスの激怒は殺意に変わった。




* * *


「すっかり広がったな。え?変態?」フランクがせせら笑った。彼はベッドの上にいて、鮮血の止まらないドリアンに挿入していた。「さあ、もっと泣けよ金髪。静かすぎて楽しめねえぜ。」男が腰を鋭く突き出すと、ぐったりした伯爵が鋭い叫び声を上げた。「それだぜ、それ!」


「続けろよ、カウボーイ!」チャーリーが横からけしかけた。フランクは半死半生のドリアンを突き続けた。


彼らはかわるがわる伯爵を強姦し続けていた。最初はチャーリーだった。彼は数分で果て、横で見ていたフランクを笑い死にさせそうになった。フランクが飲んだアルコールの量が彼の嗜虐的な性癖を増幅していた。彼は伯爵を絶叫させるような行為だけを求めていた。


彼は飲み干したばかりの酒瓶を逆さに持ち、たった今チャーリーに引き裂かれ、血を流しているその部分に強引にねじ込んだ。絶叫に満足できず、彼はさらに指を入れた。一本、二本、そしてとうとう片手すべてをドリアンの体の中に収めた。


酒瓶と指を入れられ、ドリアンは縛めを外そうと絶望的にあがいた。彼が喉の限りの悲鳴を上げると、男は拳を中に突き込んだ。ドリアンはとうとう気を失った。


一部始終を見ていたチャーリーは、興奮のあまりフランクが拳を抜く前に床に精を漏らした。フランクはこれまで以上に大声を上げて笑い、お前の番は無しだなと宣言した。


チャーリーはうんざりした顔になり、バスルームへ水を汲みに行った。グラスに水を入れて戻ると、ドリアンの顔に水をぶちまけて目を覚まさせた。朦朧と意識を取り戻した伯爵にフランクが再びまたがり、サディスティック極まりない行為を再開した。


「おかまの具合がこんなにいいとは知らなかったぜ。おまえはどうだ、チャーリー?」


「やっちまえばどっちのケツでもいっしょだろ。」チャーリーはタバコに火をつけ、軽蔑した表情で答えた。


フランクの目が丸くなった。「おい、一本よこせよ。もっと大声を上げさせてやるぜ。」


彼らの背後から、冷たい怒りに満ちた声が響いた。「そいつにもう一本でも指を触れてみろ。心臓を撃ちぬいてやる。」


チャーリーが振り返っり、激怒したクラウスが巨大な拳銃を握りしめて階段を登り切ったところに立っているのに気づいた。


「くそっ!」


彼の拳銃は数フィート離れたテーブルの上にあり、彼はそれに手を伸ばすという大きな誤りを犯した。クラウスは前に出て、怒りの限りを込めて男の顔面を殴りつけた。チャーリーはその場に崩れ落ちた。鼻が折れ、完全に気絶していた。クラウスは怒りを浮かべたままフランクの方に向き直った。「降りろ。今すぐにだ。」彼はそう命じた。


「嫌だといったら?」


「殺す。」


視線がぶつかった。フランクは相手の言葉が言葉そのままの意味だと理解した。彼はおとなしくベッドから降りた。


「床に伏せろ。」クラウスが命じた。ドリアンがうめき声を上げた時、クラウスは気遣わしげに彼を見やり、外傷に目を止めた。あざの残るまで殴られ、出血していた。


「おいおい、本気になるなよ。こいつはただのおかまだろ?」フランクが軽蔑を込めた口調で言った。


クラウスはさっと向き直り、小柄なサディストが膝で立ち上がるのを見て眉をしかめた。我慢できたのはそこまでだった。顔面に蹴りを入れ、顎の骨を砕くと同時に相手を失神させた。


それからクラウスは引き裂かれたシーツの一片を拾い上げ、倒れた男の手を背後でを縛り上げた。ドリアンへ近づく前に、完全に気を失っているもう一人の男も同じように拘束した。


クラウスは伯爵の顔を両手で包み込んだ。「ドリアン?」彼は優しい声をかけた。「ドリアン、おれの声が聞こえるか?」


ドリアンは呻いた。彼の瞳は目の前の男に焦点をあわせるまでゆらゆらとさまよった。それから彼は小さな泣き声を上げて体を引いた。「もうやめてくれ・・・」彼はつぶやいた。「お願いだから・・・」


「ドリアン、おれだ。」クラウスはもう一度優しく声をかけ、血と汗の絡まる髪をかき上げて顔を見つめた。「クラウスだ。」彼はポケットを探り、ドリアンの拘束を解くためのナイフを探した。


「クラウス?クラウス、どこだい?なぜ来てくれないんだ?」ドリアンがすがりつくように声を上げた。


彼の言葉は短剣のようにクラウスの心に突き刺さった。彼はドリアンの拘束を外し、激しく損傷したその部分の出血を止めるために注意深くタオルを押し付けた。それから体にブランケットを掛けながら、その他の部分の外傷を調べた。呪うべき下種どもめが。こいつらに何をされた?一体どのくらいこうしてたんだ?


ドリアンが苦痛の声を上げ、クラウスは優しく頬を包み込んだ。「ドリアン、おれはここだ。」彼は柔らかい口調で告げた。「もう終わったんだ。」


ドリアンは焦点の合わない眼差しでクラウスを見た。聞きなれた声が、ようやく彼の脳裏に届いたようだった。「クラウス…?」彼は小さな声で尋ねた。


「そうだ。おれだ。」


「頭が痛いよ。」ドリアンは低い声で言い、身動きしようとして苦痛に呻いた。「どこもかもが痛むよ・・・。」


「じっとしていろ。」クラウスは命じた。そして死ぬな。頼む、ドリアン。おまえは見かけより強いはずだ。


ドリアンはクラウスにしがみつき、泣き始めた。


クラウスは目を閉じた。泣いているのが自分自身のように感じられた。それから彼はまぶたを開けて床に横たわった男どもを見下ろし、鉄のクラウスに戻った。彼は殺意を込めた目で男たちを見つめた。「ドリアン、救急を呼ぶぞ。」彼ははっきりした口調でそう告げた。


「置いていかないでくれ。」ドリアンがつぶやくように言い、クラウスを掴む手に力を込めた。


置いてなど行くものか!


「電話をかけに下へ行くだけだ。おまえには緊急医療が必要だ。こいつらは拘束した。大丈夫だ。」クラウスは落ち着いた声でそう言い、硬い声で付け加えた。「何かするようなら、殺す。」


ドリアンは返答を聞いてうなずいた。そんな約束を実行できる男がこの世に一人しかいなかった。鉄のクラウス。ドリアンは体の力を抜き、ひどく痛む頭を枕に乗せた。体を丸めたかったが、その力すらなかった。


クラウスは立ち上がり、じっとドリアンを見つめた。視界の隅に二人の男が入り、自分の殺意と戦わねばならなかった。彼は階下に降り、衛星電話で警察と緊急に通報した。それから彼はベッドルームに戻り、伯爵の傍らに腰を下ろしてただ待った。彼のこれまでの世界が砕け散るのを。




2012/04/22

FEET OF CLAY 03 Play Time - by Margaret Price

 
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Play Time - お楽しみのお時間




「悪くない風呂だったぜ、金髪。」フランクはそういいながらバスタブを出て、体を拭いた。


ドリアンは深い息をついた。私の手がよかったって意味だろ、下種野郎が。彼は内心でそう毒づきながら、無理に笑みを浮かべた。


チャーリーの声がした。「おい金髪、ここにある服は全部おまえのか?」


ドリアン心臓がひっくり返りそうになった。くそ、あいつはクラウスの服で何をする気だ?「何枚かは私のだ。それ以外はこの山荘の持ち主のものだよ。」かれは口調を乱さないように気をつけながら応えた。


「どれがおまえの服かは一目でわかるな。」チャーリーがげらげら笑った。バスルームのドアに立った彼は色鮮やかな伯爵のシャツを手にしており、ドリアンが恐れていた通りクラウスのローブを着込んでいた。


「笑わせるぜ、金髪。おまえは正真正銘のおかま野郎だな。そうだろ?」フランクは伯爵のシャツを見て笑い、それから伯爵本人に目を戻した。バスルームを出た彼もまたクローゼットに向かった。


「空腹は満たしたし、体もすっきりした。」ドリアンはゆっくりと口を開いた。「車に乗って目的地へ出発したらどうかな?」


「で、俺たちの車が角を曲がるなり、おまえは警察に通報するって訳だな。」チャーリーが返した。


なんという皮肉。エロイカが警察に通報など。「いや、それはないな。」ドリアンは平静な口調で言った。「ここには電話を引いていないんだ。携帯電話も圏外で使えない。」クラウスの衛星電話はもちろん使える。だがそれを教えてやる必要はない。


「いい考えがあるぜ。」チャーリーがにやにや笑った。


嫌な予感がした。何かが悪い方向に向かっている気がした。「いい考え?」


チャーリーは服を着て戻ったフランクへ目配せした。「な?」彼はそういい、ゆっくりと伯爵に襲いかかった。「もっとずっといい考えだ。」






* * *




ドリアンは抵抗した。バスルームから引きずられていく間、引っ掻き、蹴り、爪を立て、噛み付きさえした。だが身につけたものはすべて剥ぎ取られた。チャーリーは伯爵をじっくり観察し、充分に女の代わりになると結論付けた。それは間違ってはいなかっただろうが、伯爵はやはり男であり、女相手のようには行かなかった。脱走兵たちはすぐにそれを思い知った。


フランクはとうとう伯爵の後頭部を空の酒瓶で打ち、気絶させた。


「おい、フランク!まだ殺すなよ!」チャーリーが慌てて止めた。


チャーリーがぐったりした伯爵をベッドに引きずり上げているあいだに、フランクはシーツを引き裂き、紐を作った。いくらもたたないうちに、伯爵はうつ伏せの大の字の格好でベッドの金属製の柵にしっかりと縛り付けられた。このベッドはもともと山荘においてあったベッドよりも大きく、大柄な男性二人が心地よく眠るのに充分な大きさだった。ベッドの柵は金属製で、10年前にクラウスがへし折った木製の柵ではなかった。


チャーリーがバスルームからグラス一杯の水を持って戻り、ドリアンの顔に水を浴びせて意識を取り戻させた。伯爵はずきずき痛む頭を持ち上げ、ぼんやりとした目で辺りを見回そうとした。何が起こっているのか、はっきりわかっていなかった。


チャーリーがベッドに座り、伯爵の顔に前を寄せた。「咥えろよ、おかま野郎。」彼はそう命じた。


「横になったままで?」ドリアンは半信半疑の口調で訊ねた。


「そうだ。そのままでだ。」


「窒息するよ。」


「そんなわけあるか。」チャーリーはそう答え、伯爵の髪をわしづかみにして怒張しきったものを彼の口の中に押し込んだ。


ドリアンは何とかそれを吐き出そうとし、頭を後ろに引こうとしたが、引きずり戻されただけだった。くそっ、本気で私を窒息させる気か。彼は目を閉じ、屈辱的な情況に耐えようとした。伯爵は再び鉄のクラウスを想起し、胸の中に小さな悦びを感じた。この男たちはあらゆる意味でクラウスとは比べ物にならなかった。この男の持ち物があのドイツ人に匹敵していれば、伯爵は間違いなく窒息死していただろう。


先ほどと同じく、チャーリーはあっという間に果てた。喉の奥に吐き出された精液に、伯爵はほとんど吐きそうになった。チャーリーは腰を落としてにやりと笑い、フランクに目配せした。「おまえもどうだ、フランク?」


「やめてくれ。」ドリアンは縛られた手首を弱々しく引きながら呻いた。なんて悪夢だ。早く目が覚めればいいのに。


「手を抜くなよ、金髪。こっちには銃があることを忘れるな。」チャーリーはそう言ってベッドから降り、フランクと場所を代わった。


ドリアンはフランクの持ち物に目をやり、精一杯笑ってみせた。「いいさ。息ができないほどのものでもないみたいしね。」彼はそうあてこすり、続く報復を待ち構えた。覚悟した通りのことが始まった。


フランクが腰をつきだして伯爵の口をいっぱいに塞いだ。彼は相棒よりも持ちがよかった。最後までいく前に酸欠で気を失うかもしれないなと伯爵は思った。だがそうはならず、男は奇妙にくぐもった声をあげてとうとう絶頂に達し、伯爵の口の中いっぱいに射精した。


「悪くねえな。」フランクはベッドを降りながらそう言った。「だがよ、おかまってのは尻を使うんじゃねえのか?」


「やめろ!」ドリアンは叫び声を上げ、拘束を外そうと真剣にもがいた。くそっ!どこにいるんだ、クラウス!


「そうそう、そういう声が聞きたかったんだぜ。」チャーリーが低く笑った。


男たちの手が体中を這い回るのを感じ、ドリアンは目をきつく閉じた。


フランクは酒瓶を拾い上げて、その残りを飲み干した。「いくときはどんな声でよがるんだ? え、金髪?」


  
  

2012/04/21

FEET OF CLAY 02 Killing Time - by Margaret Price

 

 
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Killing Time - 時間稼ぎ


「おい、フランク!こいつを見ろよ!」チャーリーが嬉しげな声を出した。「酒が並んでるぜ!」ふたりは酒棚をあっという間に空っぽにしそうだった。

男たちが一週間分の食料を乱暴に食い散らかしている間、ドリアンは居間の革椅子にすわって眺めていた。暖炉の火と時計を。

「大当たりだぜ!」

フランクが相棒に加わって歓声を上げた。

彼らが酒棚を漁り始め、ドリアンは深いため息を付いた。まあいい。さっさと酔ってへべれけになっちまえ。

だが不幸なことに、男たちは単に酔っただけで、意識を失うほどには至らなかった。彼らは伯爵を無遠慮に眺め、伯爵は不愉快さにいたたまれなくなった。

「よう、金髪。」チャーリーが出し抜けに声を掛けた。「なんで女を連れてこなかったんだよ?」

ドリアンは冷たく答えた。「きみの知ったことではないね。」

フランクがげらげら笑い始めた。「チャーリー、おまえ目ん玉をどこに付けてんだ?こいつはおかまだろ、わかんねえのか?」

ドリアンは歯ぎしりをしたが、声を出さなかった。

チャーリーのが目を見開き、伯爵をじろじろ眺めた。「そうなのか?おまえ、カマ野郎か?」

「きみの知ったことではないと言ったろう?」ドリアンは氷のような声で返した。

「ってことは、そうなんだな。」チャーリーはそう言いながらドリアンに近づき、髪をわしづかみにして椅子から立ち上がらせた。「女を探してたんだぜ。おまえが代わりをしてくれるってことだな。」

ドリアンは体をこわばらせた。心臓が早鐘を打った。それは男が咥えろと命じてきた時に最高潮に達した。嘔吐しないようにするのが精一杯だった。男たちは薄汚れていて汗臭く、ひどい体臭がした。

跪けと命じられた時に、ドリアンは両手を上げて口を開いた。「ねえ、こうしないかい?」

チャーリーが目を細め、フランクと視線を交わした。「なんだ?」

「きみたち、何日か食べてない様子だよね。」伯爵はゆっくりと話しだした。「最後に熱い風呂を使ったのはいつだい?」

フランクが鼻で笑い、手のひらをひらひらさせた。「熱い風呂、ときたもんだ。」

「きみたちにいい思いをさせてあげるさ。体を洗ってあげるよ。」

「体を洗う?」チャーリーが鼻を鳴らした。「女みてえだな。」

「私のやり方をためしてごらんよ。」ドリアンは出来る限り媚を含んだ声を出した。

フランクが笑い出した。「おまえ、誘われてんだよ、チャ-リー!」

チャーリーはまだドリアンの髪を掴んだままだった。乱暴に髪を引き、尋ねた。「俺を誘ってやがるのか?」

ドリアンは何の含みもなさそうな振りをした。「だって、口でしろって言ってきたのはきみだよ。」

チャーリーが答える前に、フランクが爆笑した。「もうその気になってやがるとさ、チャーリー。」

「黙れよ!」チャーリーは伯爵に向き直って考えこみ、とうとう伯爵を階段のほうへ追いやった。「わかったぜ、やってみろよ変態。何をしてくれるか楽しみだぜ。」

ドリアンは無理に笑顔を浮かべ、階段を登った。バスを用意しながらこう思った。クラウスがマグナムで終わらせてくれるさ。この下衆野郎どもめ。


* * *


チャーリーがが銃を持たずにバスルームに現れたため、ドリアンは彼がフランクに銃を託したと判断した。男が服を脱ぐ前にきまり悪げにためらうのを見て、伯爵は場違いな楽しみを味わった。男は深めのバスタブに体を沈めた。ドリアンは仰々しく準備をし、まるでそれが大事な儀式の一部であるかのように時間を掛けた。

ドリアンが背中を流し終えると、チャーリーはバスタブの中で手足を伸ばして横たわり、目を閉じて体をそらしながら、伯爵が彼の腕と足から垢をすっかりこそげとる感触を味わっていた。彼の皮膚には機械油が染み込んでいて、この男は多分兵器の修理兵だったのだろうなと伯爵は思った。男が風呂の申し出を受けたことを有難いと思わずにはいられなかった。胃の中身をぶちまけることなしに、命じられた仕事をこなすことができたとは思えない。

その数分の間、男は眠っているように見えた。それから男は突然ドリアンの手首を掴み、その手を自分のものへ導いた。「ここの世話を忘れるなよ、金髪。」チャーリーはにやにや笑った。

男が自分のものの長さに合わせて手を上下させ始めた時、ドリアンの体は再び体が強張った。相手のものに硬い手応えを感じ始めた時、もはや避けられない事態を覚悟して目を閉じた。

「もちろんさ。」ドリアンは落ち着いた声でそう言いながら、そそり勃つものを手の中であしらった。「ちゃんとしてあげるよ。」

「そうこなくちゃな。」

しっかりしろよ。初めての坊やってわけじゃないだろ。伯爵は自分に言い聞かせた。彼は快楽の道の熟練者だったが、意に沿わない相手と楽しむことはなかった。このかさの高い太り気味の、薄茶色の髪の男はあらゆる意味で鉄のクラウスとは比べ物にならなかった。

チャーリーのよがり声が伯爵を現実に引き戻した。ああ、私は何を操縦してるんだ?彼は一瞬そう考え、すぐに気を撮り直した。アメリカ人を手でいかせてやっているうちに、意識を飛ばしていたらしかった。

いくらもたたなうちに男は感極まった声を上げてバスタブの中に射精し、喘ぎながら息をついた。

なんて堪え性のないやつだろ。ドリアンはぬるま湯の中から手を引きぬき、立ち上がってタオルに手を伸ばした。バスタブの方に戻ろうとした時に、フランクがバスルームの入り口に立った。

「おまえら、バスルームで一晩中お楽しみか?」彼は冷笑した。

ドリアンはその男のろれつの回っていない口調に気づいた。そして彼の手の中のほとんど空になった酒瓶に目を落とした。相棒が風呂を楽しんでいる間じゅうずっと、酒棚を空にする作業に熱中していたのかもしれなかった。

チャーリーは水音を立てて立ち上がり、伯爵の手からタオルをひったくった。「うるせえ、今出るとこだ!」彼はフランクに近づきながら奮然と言い返した。「フランク、おまえ臭いぜ!」

フランクは自分の脇の下の匂いを嗅ぎ、顔をしかめた。「くそ!さっさと言えよ、この野郎!。」

ドリアンは目を逸らし、洗面台にもたれかかった。もう一度、おなじ奉仕が必要なようだった。彼は小柄で筋張った体格のフランクを見ながら、この二人が基地を脱走した経緯について想いを巡らせた。だがいまの状況では、それが何か重要な問題だというわけでもなかった。
   
  

2012/04/20

FEET OF CLAY 01 AWOL - by Margaret Price

 
 
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エロイカと少佐の密かな愛人関係が始まってからほぼ10年が過ぎた。そしてある過酷なな状況が、彼の世界はたった数時間で粉々になってしまうほどの脆さなのだと鉄のクラウスに思い知らせた。どうすればその世界をもとに戻すことができるか、もしくはもとに戻すことが可能なのかどうかすら、彼にはわからなかった。


この物語は"Appetite Suppressant"の続編であり、順不同で以下の要素を含んでいる。セックス、銃、暴力(3Pあり)、巨根クラウス(;-D)、ヒロイックなクラウス、お色気ドリアン、思いやりに満ちたクラウス、ためらいがちなドリアン、裸のクラウス、裸のドリアン、ぐだぐだ悩むクラウス、同じように悩むドリアン、ロマンティックなクラウス(!)、こにくたらしいドリアン、幸せいっぱいクラウス、泡風呂、少佐の部下たち、その他のサプライズ色々。


作者より:“Appetite Suppressant”の続編としてこれを書いたとき、私はレッド・ツェッペリンに“Ten Years Gone”という歌があるとは知らなかった。全く予期せぬ驚きだった。



FEET OF CLAY
By Margaret Price






FEET OF CLAYとは、高く評価されている人物の弱点、あるいは隠された欠陥を指す




第一章: AWOL - (軍における)無断外出・脱走


その男が道路に飛び出したのがあまりにも突然だったため、ドリアンには男を避ける余裕はほとんど無かった。彼はブレーキをいっぱいに踏み込んでスピンし、もう少しで道路から飛び出しそうになった。たった今起こりそうになった事故のショックから気を取り戻すや否や伯爵は車から降り、あやうく引き殺しかけた気違いを振り返った。


「自殺でもする気か!」伯爵はそう怒鳴った。ここがドイツで、ドイツ語で怒鳴るべきだとは忘れていた。だがそれは問題にならなかった。その男が英語で返事を寄越したからだった。


「てめえのことだけ気にしてやがれ!」


くそっ、ヤンキーか。ドリアンは心の中でうんざりした声を上げた。それから、その男がこんな人里離れた場所で何をしているのかと訝しんだ。その疑問は後ろから近づいてきた男に銃を突きつけられた時点で一旦棚上げになった。


「乗せてもらうぜ、金髪ちゃん。」もう一人のアメリカ人の声が耳に入った。


「私の車に、という意味だね。」伯爵は両手を上げながら静かに応えた。


「物分りのいいこった。」


それ以外にどんな意味があるってんだよ!伯爵は賢明にもそれを声に出さなかった。


「お前が運転席だ、金髪。」道路に飛び出してきた男が、車に近づきながらそういった。


「私が?本気かい?」


背後の男が伯爵の髪を掴み、乱暴に後ろに引いた。「おかしな真似はよせよ。警察へ駆け込むとかな。」


「私が地元の人間に見えるのか?」伯爵は平然と言い、「このへんの警察の場所なんて知らないよ。」嘘を付け加えた。


後ろの男がもう一人の男を見て、どうする?という顔になった。相手が頷くのを見て、男は伯爵を引きずって車へ向かった。「お前の行き先へ連れて行け。余計な真似はするなよ。」


「やらないよ。」


伯爵は車に乗り込み、続いて乗り込んできた二人を苛立った目付きで一瞥した。一人は助手席に、一人は後部座席に座った。彼らが軍服らしきものを着ていたため、伯爵は眉をひそめた。盗んだ軍服か、それとも脱走兵か?車の向きを変える何かいい口実があればいいのにと願った。この道は少佐の山荘にしか通じていなかった。


「食いもんはねえのか、金髪?」銃を持った男が尋ねた。


「ブートに食料がある。」ドリアンは車を道路に戻しながらそう答えた。


「どこにあるだって?けっ、イギリス野郎は妙なしゃべり方をしやがる。」


「トランクに入ってるって言ったんだよ、チャーリー。おまえはほんとになんにも知らねえな。」後部座席の男がせせら笑った。


「へっ、へっ」毒々しい答えが返った。「ちょっとイギリスに住んでたからって何様のつもりだよ、フランク。」


「少なくともおまえよりはマシだって言ってんだよ。」フランクは鼻を鳴らした


ドリアンは深いため息をついて、気にしない様に自分に言い聞かせた。仲間割れするならさせておけ。運が良ければクラウスが予定よりも早く着いて、このふたりを叩きのめしてくれるかもしれない。




* * *




この10年で初めて、ドリアンは少佐の山荘が近づくのを嬉しくない気分で見つめた。彼とクラウスは二人の関係を周囲に知らせることなく、数カ月ごとに秘密の逢瀬を重ねては、黙ってお互いの日常に戻っていた。山荘で逢うのはドリアンとクラウスであり、山荘を一歩出れば彼らはエロイカと少佐に戻った。この人里離れた場所で恋人と過ごす一分一秒を、ドリアンはかけがえのないものだと感じていた。だが今その二人だけの聖域は、呪うべきアメリカ人に蹂躙されようとしていた。


ドリアンは山荘の敷地に入り、車を車庫に後ろから入れようとした。


「前から突っ込んで停めとけよ。」チャーリーが命令した。


「前向きに駐車しておいたほうがいいんじゃないかと思ってね。」伯爵は邪気のない声でそういった。


「なぜだ?」


「出るときに早く出られるだろ?バックして車を出すより早いよ。」伯爵は落ち着いてそういった。そう停めれば、クラウスには山荘に他に誰かがいることを知る。


「いい考えじゃねえか、金髪ちゃん。」フランクがそう言って、チャーリーを見てにやにや笑った。「聞いたかよ?おまえより賢いのがもう一人いたぜ。」


ドリアンは再び運転に集中し、車を前向きに停めた。二人の男はトランクが開く音に跳び上がった。


「何しやがった!」チャーリーが喘いだ。


ドリアンは再び無邪気な振りをした。「食物がほしいんじゃなかったっけ?」


「そう、食いもんだ。」


フランクが笑い出し、チャーリーは苛立ったような視線を向けた。


「口を閉じて荷物を運べよ、フランク。」


「なんで俺なんだよ?」フランクは言い返した。


「銃を持ってるのが俺だからだ。」


ドリアンは車から降り、山荘の入口に近づいて鍵を開けた。ドアを開けながらため息を付いた。なんてこった。早めになんか来なければよかった。彼は車に戻り荷物を取り出した。そうしながら、首にかけた長い白のスカーフを地面に落とした。そして荷物をもって山荘に入った。フランクが食料品の入った袋を抱えてあとに続いた。


伯爵はキッチンへ向かい、荷物をテーブルの上に置いた。彼はチャーリーが銃を腰のベルトに戻し、荷物を両手で持っていることに気が付いた。


ドリアンは後ろに下がり、荷物の中身を整理する前に、ふたりが食料品を漁るにまかせた。時間稼ぎになることならなんだっていい。がつがつと食料を口にする二人に向い、彼は咳払いをして尋ねた。


「暖炉に火を入れてもいいかな?夜は寒くなるんだ。」


二人は目配せを交わし、肩をすくめた。ドリアンはこれを承諾の意味と解釈して暖炉へ向かった。ほんの小さな火がついた。あとで大きくすればいい。ひどい煙だ。そう思いながら彼はこっそり後ろを振り返り、二人の男を確認した。間違いない、Geilenkirchen空軍基地からの脱走兵だ。彼らは最後に食事をしてからどのくらい立っているのだろうと思われる程に、貪欲に口に物を詰め込んでいた。ドリアンはその疑問を口に出しそうになり、危うくこらえた。余計なことは聞かないほうがいい。食物を与えて、車を盗ませてやろう。それからクラウスの到着を待てばいい。