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朝からそんなに食べちゃ太っちゃうよ。
私はは少佐の旺盛な食欲に圧倒されていた。朝食の食べっぷりまで戦車みたいだ。私の歴代のボーイフレンドたちに、こういうタイプの男はいままでいなかったな。
もう少し可愛らしく葛藤したり悩んだりするかと思ったのに、少佐は何の悩みもなさそうに皿の上のものを減らす作業に集中していた。割と腹が立った。昨夜のことって、きみにとってはそんなに些細なことだったのかな?そんな些細なことのために、この私を何年も待たせたってわけかい?こう見えて私はけっこう悩んだんだよ。シャツを破り捨ててきみのベッドに忍び込むまでには。
そして昨夜のきみは本当にすばらしかった。それはもう、言葉にできないぐらいに。
少佐がふと顔を上げた。
「食わんのか?」
「食欲が無いんだ。昨夜のきみが素敵すぎて。」
少佐の顔からさっと表情が消えた。そうだよ。少し困るといいよ。
「このシャツ、もらっていいかな。きみに抱かれてる気がする。」ふふふ、とシャツを撫で回しながら少佐に流し目をくれて、どきりとした。いつもなら、それはそれは嫌そうな顔をして目をそむけるはずの少佐が、舐め上げるような目で正面から私を見ていた。冴え冴えと光る三白眼の中で深緑の虹彩が普段よりも深い色に沈み、その緑の奥にはっきりした欲望がうねっていた。欲望はもちろん、一直線に私へと向けられていた。それから彼は、私に視線を釘付けにしたままフォークに刺した皮付きの大きなチップスをゆっくりと口に押し込んで咀嚼し、嚥下し、唇の周りを舐めた。ジャガイモと一緒に食われたような気がした。噛み砕かれ、飲み込まれ、相手のからだの奥底にまで取り込まれたような、圧倒的な被征服感。うそだろ、私が。
なにか変なところにスイッチが入ったんじゃないか、きみも私も。喘ぎそうになった息をかろうじて抑え、コーヒーで喉を湿してから私は言葉を次いだ。
「少佐、きみがそんな風なのは、らしくないよ。そんなふうに見られたら、」やや挑戦的に反撃した。これでどうだ。「勃っちゃうよ、私は。」
「おれはもう勃っとる。」
間髪入れずに返答が帰ってきた。コーヒーを噴きそうになった。咳き込みそうなのをこらえて下を向いた。ああっ、だめだ、赤面してるのが自分でもわかる…、静まれ、私の心臓!
「耳まで赤くなっとるな。いつもそうしおらしくしてくれるとおれは助かるが。」
食事の手を止めないまま、少佐は明らかに面白がっている声で続けた。「おれにとっても忘れられん夜だった。ベッドでのおまえがあんなふうだとはな。自分が何を言ったか覚えとるか?覚えてないなら言ってやろうか。爽やかな朝食の場にはふさわしくないがな。よくもまああんな恥しらずなおねだりができるもんだ。思い出しただけでおれまで赤面しそうだぞ。たとえばな…」
「ちょ、ちょっと、やめてくれよ、少佐…。」
「いや、やめてやらん。おれには積年の恨みがある。」
私はほとんど涙目になって少佐をにらみつけた。「きみが意地の悪い性格だとは知ってたけど、こういうふうだとは思ってなかったよ。」
「そうか?ゆうべの意地悪はまだ足りなかったか?手柔らかすぎたか?うん?」
「もう、やめてくれったら!」
昨夜の記憶が突如として奔流のように蘇り、腰が痺れた。今食事が終わっても、うまく席を立って歩けそうになかった。コーヒーカップをソーサーに置くと、手が震えてカチカチと音が鳴った。
「おれは気分がよくない。」
少佐はフォークを皿に置いて背を伸ばし、指を組んだ。
「おれは男は初めてだ。気をつけて慎重に動いたつもりだった。それをおまえは、」
息を吸い込み、下からねめ上げるような目で私を見つめ、隣のテーブルには決して届かない低い声で、少佐は言った。
「どこを触っても体をくねらせていい声で泣きやがって、よほど今までの男どもの仕込みが良かったと見える。おれは気分が悪いぞ。」
すごくよかったのは事実だった。だってもう何年も夢見てたんだもの。何度も夢の中でやったし、自分でやるときも数え切れないぐらいネタにした。練習が十分だっただけだよ。それをそんな言い方するなんてさ…。でも確かに私の体の反応も常軌を逸していた。昨夜も、今も。十三歳で男たちと寝るようになって以来あらゆることはやり尽くしてきたつもりだったのに、ごく普通のセックスであんなに感じるなんて、正直言って初めてだ。ああ、この私がこんな日の高いうちから、外の食事の場でこんなに・・・なっちゃうなんて。
微かに体を震わせながら少佐を見上げると、少佐はコーヒーを飲みながら空いた手を私の方に伸ばし、テーブルに載せていた私の手の甲を触れるか触れないかのかそけさで撫で、私の反応を面白そうに眺めた。それから手の甲を爪で軽く引っかいてから、手を戻した。引っかかれた場所から甘い痺れが全身に伝わり、私はそれだけでいきそうになってしまった。どこでそんなやり方を覚えたんだよ!どこの女が爪できみを愛撫したのさ!ああもうっ、私がこんなになるなんて!
少佐はゆっくりとコーヒーを飲み終えた。
「食い終わったら買出しだ。ありったけの食糧を買い込んで部屋に籠もるぞ。覚悟しておけ、手加減と時間制限なしだ。おれは意地が悪いらしいからな。腰が抜けるまで犯してやる。おれの最後の一滴までだ。わかったらさっさと食え。」
食べられるわけが、なかった。駐車場へも歩けそうに無い私を見て、少佐は店先まで車を回してきた。わざわざ車を出て助手席のドアを開けてくれた。ちょっと楽しんでいるようだった。ドアが閉まり、メルセデスの軽快なアクセル音が響く中、私はシートにぐったりと身を預けて目を閉じた。ロンドンへ帰るチケットを延期しなきゃ。
END
※あれえ、私って少佐受けじゃなかったっけ?今月はとにかく伯爵を幸せにしてあげたいんです。(その反動は来月来るのかも) 村雨公主さんと雑談中に、「発情少佐」という単語が出てきたのでそれで書いてみました。村雨さんの妄想は発情少佐に追いかけられてちょっと困ってしまう伯爵でしたが、私の妄想では両者ともに発情してしまいました。めでたしめでたし。あとで発情してないバージョンも書く予定です。
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