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2012/05/19

FEET OF CLAY 11 Bad Dreams - by Margaret Price


 
Fried Potatoes com -  FEET OF CLAY  11 Bad Dreams
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Bad Dreams - 悪夢

クラウスはウェストハル医師の提案を聞き入れ、いくつかのサポートグループと連絡を取っていた。そこから学べることも多かった。もっとも納得のいった助言は、被害者を責めるなという原則だった。もちろん彼はそのことをよく承知していたが、さらに深く肝に銘じた。ドリアンはすでにもう何度か、暴行を受けたのは自分の落ち度だったと言い出して聞かないことがあった。あんな時間に山荘にいかなければ、こんなことにはならなかったはずだと。クラウスはそのたびにそうではないと諭した。すべての責任と罪行は、気を失ったままの無力な伯爵を強姦し続けていた、あの二匹のの腐った獣ども以外が負うべきではないと繰り返した。

夜毎の悪夢から逃れられないにもかかわらず、ドリアンはその記憶そのものについては一切なにも取り戻さないままでいた。寝汗でびっしょり背をぬらして、ゆえのない恐怖に震えながら目を覚ますこともあった。主治医たちは最善をつくしていたが、目に見えるような治療の効果は何も無かった。薬も手助けにはならなかった。ウェストハル医師は記憶が無意識の壁を破ろうとしていると推測していた。だが伯爵の精神にまだその準備が整っていないのだった。もしくは、思い出したくないのかも知れなかった。

その夜、クラウスがすみやかに眠りに落ちても、ドリアンは眠れないままに夜を過ごしていた。彼はただ、傍らに横たわる美しい恋人を見つめていた。幾度思いなおしても、恋人が自分に語った突拍子もない始まりの物語が、本当にあったことだとは思えなかった。十年を秘めた恋人同士として過ごし、そして自分がそのすべてを忘れてしまったとは。今ふたりが恋人であることすら、現実とは思えない気がした。

クラウスの傍らに体を横たえた瞬間、ドリアンは小さく声を上げそうになった。眠ったままのクラウスが微笑みを浮かべ、ドリアンを抱き寄せたからだった。

「きみを愛している、クラウス。」ドリアンは唇を寄せた。クラウスもキスを返した。そして息を吐き、「おれもだ。」と呟いて再び深い眠りに落ちた。

ドリアンは動けなかった。目を見開いたまま身じろぎひとつできずにいた。私には聞こえなかった。私には何も聞こえなかった。そう自分に言い聞かせながら、涙がなすすべもなく零れ落ちるにまかせた。いつい自分が眠ったのかさえ、判らないままだった。


* * *


「ドリアン!ドリアン!目を覚ませ!」

ドリアンのまぶたがさっと開いたが、その目は自分の肩を掴んで揺さぶり続けるクラウスを映してはいなかった。彼は必死で何かから逃れようとし、クラウスに手首を掴まれて鋭い悲鳴を上げた。

「ドリアン、頼む!目を覚ましてくれ!」

頬を打たれる感覚に、彼はついに正気を取り戻した。自分を見下ろすクラウスにひたと視線を合わせてしばし茫然とし、それから体を起こしてクラウスにしがみついた。「少佐、助けてくれ!もうこんな夜には耐えられない!」

クラウスは目を閉じ、震えるドリアンを抱きしめた腕に力を込めた。「そうしてやりたいさ・・・」彼は静かに言った。「どんな夢を見たか、覚えているか?」

ドリアンは頭を振った。「わからない・・・。ただ、怖かったんだ・・・。・」彼は絶望的なため息をついて、続けた。「まるで罠にかかったような感覚なんだ。それしか言えない。」

クラウスは頷いたが、それ以上は聞かなかった。担当医のウェストファルに、患者本人が自分で思い出すことが大事なのだと念を押されていたからだ。失われた記憶が意識の壁を破ろうと、無意識下で蠢いているのは間違いなかった。最初に壁を破って噴き出すのがあのアメリカ兵たちに蹂躙された記憶なのか、それともかつての自分による未遂に終わった強姦の記憶なのか、クラウスは暗然とした。後者であったほうがまだいい。

「いま何時だい?」

クラウスは時計に目を遣り、独り言のように呟いた。「まだ早すぎるな。」

ドリアンは呻いた。「ごめんよ、起こしちゃったね。きみは一度目を覚ましたら、もう眠れないほうなのに。」

クラウスは瞬きをして伯爵の顔を覗き込んだ。「なんでそれを知っとる?」

「え?」

「おれが二度寝ができんほうだと、なんで知っとるんだ?」

「え、だってきみっていつも・・・」ドリアンは言葉を途切らせ、愕然とした顔で少佐を見つめた。「わからない・・・。ただそう思ったんだ・・・。」そして目を大きく見開いた。「これって、私の記憶が戻りつつあるってことかい?」

クラウスは頭を振った。「おれにはわからん。」彼は体を仰向けに体を倒し、ドリアンの腕を引いて隣に横たわらせようとした。「座って話すには寒すぎる朝だぞ。」ぶつぶつ文句を言いつつブランケットを引き上げ、壁のほうを一瞥した。「夕べのうちにヒーターをつけておくべきだったな。」

ドリアンはそれを聞いて頬を緩めた。「暑さ寒さは意志の問題じゃなかったっけ、少佐?」彼はからかうようにそう言った。

「任務以外のことで快適さを求めて何が悪い。」クラウスはフンと鼻を鳴らした。その意外に正直な返答に、ドリアンは声に出して笑いだした。「裸で寝るのに慣れてないだけだろ?」その言葉はごく自然にするりと口からこぼれたのだった。自分が何を言ったか理解した瞬間、ドリアンはさらに笑った。「クラウス、記憶が戻りつつあるみたいだよ!」彼は恋人に羽のように軽くキスし、にんまり笑った。「悪夢の埋め合わせってとこかな。」

クラウスは瞬きをした。「どうせなら、もう少しまともな時間に思い出してもらいたいもんだがな。」

「ひどい言い方だね!」ドリアンはすとんと体を倒し、仰向けに毛布の中にもぐりこんでそれを独り占めにしようとした。「じゃあわたしは遠慮なく二度寝させていただくよ。」彼は憤慨したふりをしてそう言ったが、クラウスがドリアンの腰に手を回し、体をすり寄せてくるに至って頬を緩めずにはいられなかった。ドリアンの剥き出しの尻に硬くなったものが押し付けられて、ぴくぴく震えていた。

「ドリアン・・・」

ドリアンはからかうように言った。「きみがどうしても眠れないんだったら・・・」

クラウスは鼻先をドリアンの首筋にこすりつけ始めた。「いいだろ。おれのもすっかり目を覚ましとる。」

そう言いながら腰を使ってつついてくるクラウスに、ドリアンは大笑いした。「きみ、いつからそういうことを言うようになったんだい、クラウス!」

「十年前からだ。」

ドリアンは寝返りを打ち、目を細めてクラウスの顔を正面から見た。クラウスは深刻な顔でため息をついた。「あのときおまえは生娘みたいにぎゃんぎゃん泣き喚いていてだな、おれはそのおまえをひん剥いて、こう・・・」

「けだもの!」ドリアンはげんこつでクラウスの胸を叩き、クラウスは笑った。「見てろよ、ダービーチャンピオンみたいにきみの上に乗っかって、へとへとになるまで締め上げてやるから!」乗りかかろうととしたドリアンを、クラウスは毅然とした手つきで制止した。

「だめだ。まだ早すぎる。」

「クラウス・・・」

「だめだといったらだめだ。まだ治り切っとらん。だいたいおれのは・・・」クラウスは息をつき、自分が赤面していないかどうか心配になった。「おまえだって十年前はかなり苦労してたぞ。」

ドリアンはせわしなく瞬きした。「でも、もう待てないよ。」

クラウスはにやりと笑い、伯爵の手を引いて自分の足の間に座らせた。「まずはおまえからだ。」彼は呆気に取られたドリアンにすばやくキスしてそう言った。

「本気?」

「ああ。」

ドリアンが潤滑剤とタオルを取りに行く間に、クラウスは起き上がってヒーターをつけた。自分のためではなく、恋人のためだった。それからふたりはさっきの体勢にもどり、ドリアンはブランケットを自分の肩まで引き上げて、クラウスに覆いかぶさった。胸にキスし、へその周りにも唇を寄せた。それから滑らかな指をその場所に挿しいれて、横たわった恋人が体を弓なりにして息を吐くのを見つめた。じっくりと時間をかけてそこを準備した後に、ドリアンは次に移った。自分のものに潤滑剤を塗りつけ、ゆっくりと挿入した。クラウスは堪えきれない快感のうめきを漏らし、両腿でドリアンを挟み込んだ。

ドリアンは自分を包み込む体温を感じながら目を閉じた。今自分がクラウスに何をしているのか、どうしても信じられなかった。しかもそれはクラウス自身が望んだことなのだ。注意深く抜き差しを始めた。クラウスにとってこれが初めてではないと実感するのに、しばらく時間がかかった。クラウスはドリアンの動きにぴったりと体を寄り添わせていた。これはふたりの間でこれまで幾度と無く繰り返してきたことなのだと、ドリアンは次第に納得せざるを得なかった。

手のひらをついて体を倒すと、はちきれそうに膨らんだクラウスのものが下腹部の肌にこすれた。手で愛撫すべきだとは思ったが、身勝手にも今の快感に集中して身を任せたかった。あれほど恋焦がれた相手の、体の中にいるという感触。クラウスにも前をかまわれたがっている様子はなく、むしろ後ろの快感を夢中でむさぼっているように見えた。目を閉じて体を弓なりに逸らせていた。ああ、私の美しい少佐。どうしてきみのことを忘れることが出来たんだろう。きみはこんなに完璧なのに。

クラウスが体の動きをぴったり合わせると、ドリアンは押さえきれずに自分の動きがどんどん早まってゆくのを感じた。そしてそれはクラウスをさらに快感の崖に追い詰めた。クラウスはドリアンの体の下で、調教を拒む野生馬のように背骨を跳ねさせながら大声でうめいた。両の手がドリアンの腰をしっかりと掴んだままだった。

“Gott, Dorian(くそっ、ドリアン),” クラウスは喘いだ。, “das ist so gut.(よすぎる、よすぎるんだ)”

クラウスの口からこぼれたドイツ語が、ドリアンに拍車をかけた。双方が絶え間なく喘ぎ声をあげた。ドリアンの容赦ない責めの下で、クラウスは突如乱れ始めた。時間の問題だ、ドリアンはそう感じた。クラウスが声を上げて達すると、ドリアンは満足の微笑を浮かべずに入られなかった。クラウスの絶頂の声が、ドリアンを快楽の峠の向こう側へと押しやった。彼は鋭く息を呑み、クラウスの中へ自分自身を一杯に解き放った。

「クラウス・・・、きみって、すごく・・・」クラウスが両腿でドリアンを包み、体を押し付けてくるのを感じながらドリアンはそう声に出した。

クラウスは伯爵を引き寄せて情熱的な口付けを与えた。指が、巻毛の間を這い回った。正気を失うほどの快感の中でふたりがほぼ同時にいったことに、深く圧倒されていた。こんなことは久しぶりだった。ドリアンもまた彼の上で果てた。彼はドリアンを腕の中に抱きしめながら、この瞬間が永遠に続けばよいと願った。

この瞬間が終われば、ふたりは現実に戻らねばならない。そして現実の進展は、苛立たしいほどに歩みの遅いものだった。



* * *


「どうしてこれを夢に見ないんだろう?」ドリアンは眼下に広がる湖を指して言った。「こんなに・・・美しいのに。」天気のいい日で、湖面に陽光がさざめいていた。

クラウスはわかっている、という表情で肯いた。あの日あの時の伯爵を、もう一度繰り返してみている想いだった。ドリアンとの始まりの日を再現しているような気がした。彼の記憶を取り戻すために。だが十年前のあの日とはちがって、樹々の葉はもはや初夏の緑ではなく、山は秋色に染まりつつあった。ドリアンは秋のこの景色がどれほど美しいかを、よく口にしていた。風景画家を雇ってここの絵を描かせようかと真剣に考えたことすらあった。だが、それがふたりの聖域に他の誰かを立ち入らせることになると思い当たり、諦めたのだった。

ドリアンはきらきらした瞳でクラウスのほうを振り返った。「わたしを絞め殺すかわりに、我慢強く待ち続けてくれてることに感謝するよ。」彼は幸せそうにそういって、少佐の頬に羽根のように軽いキスをした。そしてそのまま目を見開き、凍りついたようにその場に立ち尽くした。

「どうした?」

「ああ、わたしは・・・、」ドリアンは微かな声でそうつぶやき、片手で口を覆った。

クラウスはいぶかしげに目を細めた。「何か思い出したのか?」

「わたしは・・・」ドリアンは頭を振った。「想い出したというより、なにかを感じたんだ。たったいま、ほんの少し、きみがそのキスを嫌がって怒り出すんじゃないかと心配になったんだ。」

クラウスは肯いた。「初めてのとき・・・、おまえはおれが怒り出すんじゃないかと怯えていた。」

「そしてきみは?」

「もちろん怒りなんぞしなかったさ。」クラウスは伯爵のもっと答えを求めるような視線に気づき、彼の首の後ろに手を回して引き寄せた。「もちろん今もだ。怒っとらん。」そう言って、柔らかなキスをした。


* * *

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