Fried Potatoes com - FEET OF CLAY 09 Return Trip
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Return Trip - 帰還への旅
クラウスは山荘に到着した瞬間のドリアンの横顔を盗み見た。運転していた間はそうしないように努めていた。彼は山荘の事後処理と整理と言う名目で、その週に休みを取っていた。車を止めて伯爵に向き直ったが、伯爵は簡単に肩をすくめただけだった。
「何か思い出したことはあるか?」クラウスは静かに訊ねた。
「少佐、もう何度も言ったと思うけど、私はここに来たことは覚えているんだよ。ここに・・・」ドリアンは深く息をついた。「ここに、きみへの罠を仕掛けるために。」
「その罠がどうなったのかは覚えていないんだな?」
「全く何も。何一つ。」ドリアンは冷たく言い放った。「こんなところにきて何になるのかも全くわからないね。」彼は腕を組んだ。車から出ることすら拒絶しているように見えた。「それと、きみが親切すぎるのも気に食わないな。」
「おまえが十年前の出来事に捕らわれたままでいるからだ。」クラウスは車を降りて、山荘のドアを開けた。玄関灯をつけて薄雪のように積もった埃を払うと、事件から過ぎた時間のことが胸にこたえた。あれは初春だった。今は晩秋、もうすぐ冬だ。彼は振り返り、伯爵が渋々と車から出て、それでも記憶の手がかりを探そうと周囲を見回しているのに目をやった。
クラウスが先に中に入った。彼はそこで、ドリアンが嫌々ながら玄関をくぐって続くのを待った。
「さあ、それで?私はここへ来た。それから?」ドリアンは腕を組み、ふてくされた態度で言った。「なにも変わらないみたいだけどね。」それから彼は手のひらで腕をさすった。「外は寒かったな。」彼は周囲を見回した。暗いブラウンの家具と革張りの椅子。最初に忍び込んだときと何一つ変わっていない様に見えた。男性的というよりほかのない部屋。クラウス本人そのもののように。
「暖炉の火入れをする間、中を見回ってきたらどうだ?」クラウスは暖炉の前に腰を下ろしてそう言った。現場検証が終わった直後に、クラウスはすでに目の付く限りの場所を整備、掃除し、寝具すべてを取り替えていた。そして執事に備品の点検とキッチンの食材の補充を命じた。
ドリアンの口調にもう我慢ならないという苛立ちが現われた。「少佐、いい加減にしてくれ。何もなかったようなふりをするのはやめてくれよ。」
「何もなかったようなふり?」
ドリアンは苛立たしそうにため息をついた。「そう、何もなかったようなふりさ。私たちふたりとも、ここで何があったか知ってるだろ。ここで、あの男たちが・・・」彼は目を閉じ、そしてもう幾度目になるだろう、体中に残るまだ癒えない外傷の原因となったその記憶を、完全に失ってしまったことを神に感謝した。
「ここでなにがあったか、おまえが知っているというのか?」
クラウスは振り向きさえしなかった。薪はすでに暖炉の中に組まれていた。彼は風戸を開き、薪に火を入れた。ほどなく、乾いた薪がはぜるぱちぱちとした音が響いた。ドリアンは少佐が立ち上がって振り返るのを待ってから、その先を続けた。
「きみだって知ってるはずさ。私はここに、きみにひどい嫌がらせをするために来た。」彼はうんざりしたように手を振った。「十年前に何が起こったのか、その詳細はおぼえてないかもしれないけどね、でもこれだけははっきり言えるよ。きみは私に何かのチャンスを与える気など、ひとかけらも、これっぽっちも持っていなかった。」
「初めのうちはその通りだったさ、ドリアン。だがその後起こったことはそうではない。」クラウスははっきりとした声で告げ、歩を進めて相手の前に立った。「おまえが襲われた日、おまえはここに、おれと逢うために来ていたんだ。」
「きみと逢う・・・?」ドリアンはせわしなく瞬いた。「きみは今、わたしをドリアンと呼んだ。」
「いつもそう呼んでいた。ここではな。」
「なんだって?」
「十年前にここで逢ったあと、物事はおれたちがそれぞれ企んだどちらの方向にも進まなかった。おれたちはな・・・」クラウスは深く息を吸った。「おまえはおれにひどい嫌がらせを仕掛けた。おれは怒り狂ってベッドの柵を折り、もうすこしておまえを強姦するところだった。」彼は自分が悪かったと認めた。「ドクター・ウェストファルは、おまえがそのふたつの事件の間の記憶をすべて封じ込めていると考えている。」クラウスはキッチンのほうを指差した。「それから、おまえがあそこで料理を作り、ふたりで食事をした。」
「料理?わたしが?きみがわたしを強姦しようとして、それからわたしが料理を?」ドリアンは額の巻毛を指で跳ね飛ばし、クラウスの言ったことを鼻で笑い飛ばそうとした。それから両手で髪を後ろにまとめ、髪の中に残る縫い跡を隠そうとしているふりをした。だがどちらも成功したようには見えなかった。
「料理は、おまえを籠絡しにかかっていたフランス人のシェフから習ったと言っていたな。」
ドリアンはあっけに取られた。「私はそんなことまで言ってたのか?」
クラウスはうなずいた。「それからおれたちは湖まで散歩に出かけ、雨に降られて逃げ帰ってきた。ずぶ濡れだった。おれは暖炉に火を入れた。」彼は後ろの暖炉に目を遣った。「あんなふうに。」
「きみにそんなロマンチックな作り話ができるなんてね、少佐。」ドリアンは皮肉な笑顔を浮かべて言った。「そしてついに暖炉の前のキス、なんて落ちはやめてくれよ。」
少佐の目が光った。「こんなふうにか?」クラウスは伯爵の顔を両手で挟み、唇に静かなキスを与えた。
ドリアンは凍りついたように動けなくなった。それから、クラウスから体を引きはがして叫んだ。「何のつもりだ!?」
「言うまでもないと思ったがな。」
驚愕のあまり二の句を告げられないまま、ドリアンは立ち尽くし、クラウスを見つめて唇を片手で覆った。「少佐・・・」
クラウスは息を深く吸い込んだ。「その日からずっと、続いている。」
「今、なんて・・・」
ドリアンはクラウスから目を逸らせなかった。現実が現実だとは思えなかった。それから、ぐらぐらする頭に手をやり、部屋を見回した。ドアを蹴破って逃げ出そうかとも考えた。「頭がおかしくなりそうだ。」
クラウスは声を上げて笑い出さずに入られなかった。「それは昔のおれのセリフだったはずだぞ。」
伯爵の青い瞳の奥に何かが煌くのを見て、胸の中にどんな思いが渦巻いているのだろうとクラウスはしばし訝しんだ。
「からかってるんじゃないだろうね。」ドリアンはとうとう口を開いた。
少佐は天を仰いだ。鉄のクラウスがついにエロイカの愛情を受け取ったと、ドリアンに信じさせることがこんなに難しい作業だとは。「もちろん、おれは本気だ。」次の瞬間、少佐は渾身の力でしがみついてくる伯爵の体を受け止めていた。まだ癒えきっていない伯爵の体が心配になるほどの勢いだった。抱きしめながら、彼はドリアンが震えているのだと思った。だが違った。ドリアンは泣いていた。涙を流していた。
「泣くことはない。」クラウスは穏やかに声をかけながら、ドリアンの体に両腕をまわした。だがそれは伯爵の嗚咽の堰を切って落としただけだった。
「飛び上がって嬉しがると思ったぞ。」
「嬉しいだって?私は忘れてしまったんだよ。」ドリアンは泣きながらそう言った。「きみはわたしが望む、ただひとつのすべてだった。そして今、きみはもうわたしのものだと言う。でもそれはすべて失われてしまったんだ。」
クラウスはドリアンの瞳をのぞきこむために、しがみついてくる手を緩めようと力を込めた。「ドクター・ウェストファルは、おまえが記憶を取り戻すだろうと言っていた。」
「取り戻せなかったら?もしずっとこのままだったら?」
「そのときには、新しい思い出をもっとつくればいい。」それを聞いて、伯爵はクラウスにしがみつく手にさらに力を込めた。
「少佐、わたしはきみにひどい言葉ばかり投げつけてきた。どう謝ればいいんだ?」
「おまえは普通じゃなかった。」クラウス穏やかに答えた。「俺は別に気にしとらん。」
ドリアンは手に力を込めて、再び嗚咽を始めた。「少佐、少佐・・・」
「クラウスだ。そう呼んでいた。」
「わたしが?」
「そうだ。」少佐はもう一度抱擁を解き、伯爵の顔に正面から視線を合わせた。「ここにいるときには、エロイカと鉄のクラウスは玄関の外に置いてくるんだ。」
「なんてことだ、十年が・・・」ドリアンがうめいた。
クラウスが愛情に満ちた手つきでドリアンの頬の涙をぬぐった。「十年のうちに何があったか、今見せてやるさ。ここにいる間におまえが何を教えてくれたかをな。」
* * *
「やっぱり、できないよ。」
ドリアンは自分の言葉に驚いた。階段の上まで登りきった彼は、そこで一歩も進めなくなった。見たことのないベッドだった。記憶にあるものよりも一回り大きくなっていた。6フィートの男ふたりがゆっくり休める大きさだった。
クラウスはドリアンの手を引いて階段を登っていた。彼は振り返って伯爵を見つめ、初めての時の自分をを思い出した。不安で、ためらいに満ちていて、死ぬほど怯えていたあの夜。クラウスはドリアンの耳に口を寄せてささやいた。「怖くなったらそう言え。おれは無理強いはせん。」
ドリアンはさっと顔をあげた。そんな言葉は似つかわしくなさすぎた。少佐・・・いや、クラウスがそんなことを言うなんて。顔をあげたドリアンの唇を、クラウスの唇がかすめた。ドリアンは目を閉じた。こぼれそうな涙を必死でこらえた。このクラウスとの思い出を、わたしはすっかり失ってしまったんだ。
「落ち着いて体の力を抜けと、いつもおまえに言われていたな。」クラウスは伯爵の腕を優しく撫でた。「今度はおれがそう言う番か?」
ドリアンは神経質な笑い声を立てた。「いかにもわたしが言いそうなことだね。」クラウスは答えの代わりに、もう一度羽根のようなキスをよこした。それから、ゆっくりと伯爵のシャツのボタンを外し始めた。優しい手がシャツの中に差し入れられ、胸を愛撫しながら肩まで登った。ドリアンのシャツが床に落ちた。下半身の衣類が続いた。そして、最後の一枚に至るまで。
なんてことだ。クラウス、きみってずいぶん手練れじゃないか。私がこれを教えたってことかい?ドリアンはクラウスの目を見つめ、ゆっくりと同じことを返した。まだこれが現実だとは信じられなかった。こんなことをしてるのに、少佐は落ち着はらったままだ。叫び声を上げて夜暗の中に走って逃げてもおかしくないのに。
クラウスの最後の一枚をはぎとりながら、胸に唇を寄せてゆっくりと顔をを下げた。指が下着の中にもぐり込んだ。唇をそのまま下に滑らせ、筋肉だけの平らな下腹部にキスした。そしてさらにその下の・・・
「これって・・・!」
ドリアンはその場にへたりこんだ。クラウスのものが姿を現したからだった。腰を落とした際に、まだ治りきっていない下半身をひどく床にぶつけたが、その痛みにすら気づかなかった。手のひらで口を覆い、目を丸くしてそれを見つめた。
最初の夜とは違い、クラウスはドリアンの反応を落ち着いて面白がることができた。ドリアンは顔をあげた。瞳がきらきらと輝いていた。「少佐、少佐、きみのってすごいよ!」
「上に乗るのが好きだったな、おまえは。」クラウスは落ち着いた声で言った。
「え?ええと、ああ、あの・・・」ドリアンは言葉を続けられなかった。
クラウスはドリアンの頬が紅潮してきたの気づいた。そして自分の興奮にも。彼はドリアンの手をとった。「床よりベッドのほうがいい。そう思わんか?」
* * *
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