このサイトでは、「エロイカより愛をこめて(From Eroica with Love)」を題材とした、英語での厖大な二次創作群を翻訳しています。サイト管理者には原作者の著作権を侵害する意図は全く無く、またこのサイトにより金銭的な利益を享受するものでもありません。私が享受するのは、Guilty Pleasure - 疚しい楽しみ-だけです。「エ ロイカより愛をこめて」は青池保子氏による漫画作品であり、著作権は青池氏に帰属します。私たちファンはおのおのが、登場人物たちが自分のものだったらいいなと夢想 していますが、残念ながらそうではありません。ただ美しい夢をお借りしているのみです。

2012/09/22

Peripeteia 11 - by Sylvia









By the Pen - Peripeteia
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伯爵との口づけは不快なものではなかった。前回はそんなことを考えていられる余裕はなかったが、だが今回はちがった。伯爵とのそれはこれまでのどんなものとも違っていた。

これまでの経験について強いて語るとすれば…、それはいつもはっきりと不愉快なものだった。非衛生的で、性行動における何らの建設的な機能もない。だが、と少佐は思った。こういうふうに事が進むなら、これは以前には思いもよらなかったほど好都合なのかもしれない。

調査の最終段階へ踏み出す決意を固めるために、少佐は頭を上げた。

「部屋は、まともなのか?」

伯爵は戸惑ったように見えた。だがすぐに気を取り直して少佐の意を正しく汲んだ。「ああ、ええと、いい部屋だよ、とても。上がって見てみる?」

少佐は短くうなずき、車を出た。彼らは目立たない階段を使い、伯爵が滞在する最上階のスイートへ向かうまで誰とも顔を合わさなかったが、それでも少佐は落ち着かなかった。

伯爵は身振りで先に入るようにうながした。少佐がそのとおり部屋に入ると、ドアを閉じた伯爵は輝くように笑って、続き部屋の居間にしつらえられたソファとテーブルの一隅へと案内した。伯爵は再びおしゃべりを始めていて、喜びを隠せない声のまま立ち居振る舞いまでが生き生きとしていた。

少佐は伯爵の案内を無視し、伯爵の手を取って引き寄せた。腰を抱き、髪に手を埋めて首を傾けさせた。

伯爵は少佐の腕の中で蕩けた。唇は柔らかく少佐を迎え入れる準備ができていて、それは少佐にとってもはや見知らぬなにかではなかった。目を閉じさえすれば、今自分が唇を貪っている相手は異性だと錯覚したかもしれない。だがこれまで異性とのキスの時には必ず感じていた内心の抵抗を、今はまるで感じなかった。そしてなにより相手が女ならば、素早く硬くなりつつあるそれをこんなふうに少佐の前へ押し付けてはこないはずだ。

手っ取り早く進めよう。少佐は突き刺さるような思考と記憶を脳裏の引き出しに押しこめ、口づけに集中した。伯爵はなすがままに受け入れているばかりではなかった。キスを導き、少佐の口の中を探り、唇をかじりさえした。手練でもの慣れていた。べつに驚くには当たらない。そして仔細に分析してみると、少佐もまたあきらかにキスを楽しんでいた。伯爵の唇は甘かった。体を寄せ合っていると、香りも手触りも素晴らしかった。それはほとんど誘惑…、いや、蠱惑的な…。

少佐の手は伯爵の背をさまよい、髪に指を差し入れて探っていた。唇と同じく、髪の手触りにもまた心奪われた。彼は伯爵を壁に押し付け、片方の手をセーターの中へ滑りこませた。手はカシミアの下の絹の下着を探り当てた。

セーターと、その下の滑りの良い絹の下着を同時に剥ぎ取った。脱がせた衣類を脇に投げ、伯爵の肉体を凝視した。ほっそりした、だが筋肉質の上半身だった。強靭さのためではなく、しなやかさと粘り強さのために鍛錬された体だった。伯爵は少佐の手のひらの下で少し震え、その手がみぞおちを通りすぎて下腹部の金髪まで降りた時には、かすかに喘いだ。

「少佐…?」

「なんだ。」少佐もまた冷静さを失っていた。熱を帯び始めた肌と衣類との隙間で手を動かそうと躍起になっていた。

その場所をある方法で撫でると、伯爵が猫のように背を丸めることに気づいた。その様子はとても、非常に…、そう、これ以上適切な表現が思い当たらない。憎らしくてたまらなかった。伯爵の反応が少佐をさらに駆り立てた。相手を壁に押し付けてもう一度唇を奪いながら、その間も手はさらに奥へともぐりこみ、硬くなったもの全体を手のひらに収め、握りしめた。もう一方の手で伯爵のベルトを外して前をゆるめて邪魔な布を下へ押しやると、やはり絹だった下着が抵抗もなく落ち、少佐は視線を落として自分が伯爵のその部分に何をしつつあるのかをこの目で確かめた。試すように手を動かした。すぐに為すべきことがわかった。愛撫し、擦り上げ、優しく握りしめた。何をどうすれば伯爵がどうなるのかがわかった。

「ああっ、少佐…。」伯爵が喘いだ。「ごめんよ、いってしまいそうなんだ…。続けてくれ…。」

明らかに、伯爵は快感に酔っていた。そして少佐もまたそうだった。これまでのところ事態は明白だった。では、さらに重大な段階に進む時が来たようだ。

少佐が一歩下がると、上気した頬であえぐ伯爵が不満気なうめき声を上げた。彼は少佐を掴み、思いがけない強さで首を抱きしめて唇と歯と舌で少佐を貪ろうとした。少佐がもう一歩下がると伯爵も続いた。次の瞬間、壁に押し付けられていたのは少佐のほうだった。欲望をかき立てられた伯爵の手が少佐の体を探り、服を脱がせ始めた。

伯爵の手と口に火を付けられた愛撫の快感に、少佐はわずかながらもめまいを感じた。背後の壁が有難かった。彼は背中を壁に預け、目を閉じた。伯爵の手が腿を割り、少佐は従順に足を広げてそれを迎え入れた。

伯爵の愛撫は柔らかだった。だが手のひらは熱く燃えていて、服の上からでもその熱がはっきりと感じられた。少佐はまぶたを上げて相手を見つめた。伯爵は片手で少佐の性器を愛撫し、もう一方の手を背後から下着に滑りこませていた。愛撫の手が同性であることをはっきり確認しても、かき立てられた快感は微塵も減じなかった。

それさえも嘘だった。少佐にはわかっていた。もし異性が相手なら、相手にこんなふるまいを許すのは金輪際ありえない。こんなふうに触れられるのを望んだことなどない。頻繁とは言いがたい情事の全ては、むしろ曖昧な義務感に肩を押されるようにことを済ませるばかりで終った。それは常に不潔で、また場合によっては不愉快な行為ですらあった。少佐には、他人が性行為を過大評価しすぎているように思われた。

なぜそんなふうに思えていたのかその理由が今わかった。不幸にもその理由は、選ぶことを許されていればそもそも自分では決して選んでいなかっただろう理由だった。

「きみがどんなに素敵か、自分でわかってるかい?」低い、だが熱を帯びた声は少佐には受け入れられず、振り払われた。少佐は唸り声を上げて頭を振った。驚くべきことにに伯爵は即座にその意を読み取り、黙って口を閉じた。

いや、ひょっとすると伯爵が口を閉じたのは、その唇を使って次の仕事に取り掛かったからかもしれない。口元が少佐の胸を下り、さまよう舌が乳首をとらえ、そして噛んだ。これまで誰にもそんなことをさせたことがなかった。そしてそれが少佐の肉体の思いがけない引き金を引いた。なにかが体の奥で小さな爆発を起こし新しい感覚が目覚めた。肌のすみずみまでが、すべての神経の先端が触れられるのを待ちつつ渇望に震えた。そして伯爵はすべてを正確に心得ていた。どこに触れるのか、どこを愛撫すべきなのか。底知れぬこの渇望の痛みをより高みへと駆り立てるために、痺れるような悦びをさらに深く穿つために。

少佐にそれを正確に評価できる資格はなかったが、それでもなおこの派手で目立ちたがりな泥棒が、本業の錠破りと警報装置の解除の腕前と同じく、性愛の道においてもあらゆる意味で卓越した手練であると認めざるを得なかった。解剖学的に不可能な動きを可能にしたように舌は動いた。そして両手が、あらゆる場所を求めてうごめいていた。腿の内側、その中心にそそり立つもの、尻、その下に揺れるもの…

「だってもうずっと待ってたんだよ。だからきみを心ゆくまで味わうことにするよ。」伯爵は満足気にため息を付き、それから声に出して少し笑った。ほとんど軽薄なほどに軽い笑い声だったにもかかわらず、内心の不安を隠せていないような響きがあった。「さあ、少佐。きみがどうしたいか言ってくれ。私は本当にきみのことを知らないんだ。ずっと夢見てた。夢のなかではなんでもした。でもそれは私のしたいことばかりだ。私は知りたい、きみが…」

「挿れてくれ。」

伯爵は体の動きを止めた。青い双眸が少佐を見つめていた。「え…?」

「聴こえたはずだ。」引き返すつもりはなかった。このことを最後まで確かめたかった。まだなお自分に確信が持てないでいた。

少佐は体を折って靴を脱ぎ、すべての服を脱いで一糸まとわぬ姿になった。伯爵は体を引いた。奇妙なことに、彼はひどくためらっているように見えた。たった今示唆された行動を完全に遂行できるような人物には見えなかった。だが黙って肩をすくめた少佐はそのままベッドルームに向かい、広いベッドに腰を下ろした。伯爵の逡巡を気遣っている余裕はなかった。自分自身の躊躇を押さこむのに精一杯だったからだ。

伯爵が内心のためらいにけりを付けて、少佐に続いて寝室に入るまでにさほどの時間はかからなかった。少佐がベッドに横たわる間、伯爵は部屋中の引き出しをめちゃくちゃに開けたてし、明らかに潤滑剤だと思われる小さなチューブをようやく探し当てた。これがまったく不測の事態だったのか、それともそういう振りをしているのか、どちらだ?

少佐は皮肉な笑みを浮かべ、自分自身の問題に戻った。今迎えようとしているその瞬間と、自分自身の肉体の覚醒について思いを巡らせた。何も考えなければいい。考えなければ問題は無いはずだ。全く問題ないはずだ。

「少佐、あのさ、なにも今じゃなくて例えば別の…」

「だめだ。」少佐は短く答えた。「続けろ。」

伯爵は少佐の前にうずくまった。両手がほとんど無意識に少佐の大腿を愛撫していた。「わかったよ。」彼はついにそうつぶやいて、体を前に倒して少佐に長いキスを与えた。少佐がベッドに横たわると伯爵もまた覆いかぶさるように体を横たえた。伯爵の片足が少佐の腿を割って入り、ぴったりと押し付けられた体の鋭い楔が、少佐の体を突いた。

組み伏せられた体から抜け出し、うつ伏せになろうとした少佐の肩をエロイカは押さえ、押し留めた。「きみを見ていたいんだ。美しいきみを。」

「そういうことをいうのはよせ。」少佐は不満気に呻ったが、声に現れた抗議の意はかつてほど鋭いものではなかった。彼は相手の言葉を信じ始めていた。少なくともそれを繰り返す本人が信じきって口に出していることを。ならばそれは伯爵にとっては真実なのかもしれない。変なやつだ。まるでおかしい。だがそれはもはやどうでもいいことだった。

なめらかな指が滑りこんできた瞬間、体が硬くなった。少佐は沈黙のままに自分の臆病さを猛烈に叱咤し、できる限り体の力を緩めようと努めた。何をしようとしているのか、自分の上にいいる男に何をさせようとしているのかを考えないでいるためには、最大限の精神力が必要だった。そして狼狽を制御しきれないでいるうちに、ついにそれが不可能だと悟った。おれにはこれは無理だ。考えないでいることも出来ない。不可能だ。この感覚に抵抗するなど…

体の上にいる男のほっそりした上半身を見つめた。けぶるような青い瞳、豪奢な黄金の巻き毛、悦びととまどいとをその表情に浮かべつつ、渇望に満ちて自分を組み敷いている男、ドリアン。ドリアン。エロイカ。ドリアン。彼は呪文のように繰り返しその名を唱え、呪文がもたらす感覚の渦へ我が身を投げ入れた。

すると爆発が起こった。これまでに感じたことのない体内からの爆発。螺旋を描きつつ自分を責め立てるドリアンの指がもたらす圧倒的な感覚に、燃えるような悦びが同じく渦を巻いて外側へはじけた。腰を上げ、体を弓なりにして息を求めている自分をかすかに意識した。

「私の名を呼んでくれ、クラウス。」ついに褥を共にした男がそう望んだ。二度目の高まりがクラウスを捉えたその瞬間に。

エロイカは、望みの物を手に入れるあらゆるすべを知りつくしているのだった。それはたやすい事だった。もはやすべてがちがっていた。クラウスは、自分の唇から相手の名がこぼれ落ちるのを聴いた。脅しでもなく、呪いでもなく、ただ彼はその名を呼んだ。彼はその感覚に完全に降伏し、愛撫を受けいれ、相手の欲望と自分自身の欲望を承認した。

たやすい事だった。一度知ってしまえば、なにも考えずにこれを享受することは、これほどまでに…



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伯爵はこうなることを全く予期してなかった。ありえないと知りつつ、うっとり夢見たことがなかったとは言わない。だが愛する男をベッドに連れ込こんで自分が主導権を握るという夢想が現実になっただけではなく、相手が自らこれを求めてくるという妄想までが実現するとは! 伯爵は最後の妄想をほとんど自分に許したことがなかった。行き過ぎた欲望が、はかない夢想そのものを台無しにしてしまうことを恐れたのだ。そしてまた、彼が描いていたいくつものシナリオのうち最も大胆でありえない内容のものでさえ、夢がここまで早く実現してしまうことを予想していなかった。ましてや、あのことを知ってしまった上でまさかこんなに早く…。

だが今はそんなことを考えている場合ではなかった。夢のなかの相手が現実となり、欲望に濡れた暗い瞳をこちらに向けてあえいでいるのだ。上達が早いなんてもんじゃない。ハリアーみたいにその場でいきなり離陸だ。もしあれほど長く物狂おしい日々を過ごしてきていなかったら、ふと興が冷めて体を引き、一度は難攻不落かと思われた相手をその場に置き去りにしたかもしれない。

きっと最初はほとんど臆病なまでの躊躇を見せるにちがいないと予想していたことを考えると、一直線にこちらの下着を引きずり降ろしにかかってくる少佐の速度は、ゴールドメダリスト級の素早さと言ってよかった。

「たぶん少し痛むよ。」伯爵はややかすれた声でささやいた。愛しい男の緑の瞳が、「さっさと取り掛かからんか馬鹿者」とでも言いたげにぎらついていた。

慎重に位置を確かめた。ついに覚悟を決めるまで出来るだけ長く時間を稼ぎ、それから彼自身をそこに押し当ててゆっくりと挿入した。その動きのさなかでさえ、自分がことを完遂すべきものかどうかまだ決めかねていた。もしクラウスが嫌がったら?もしこれが過去の忌まわしい記憶を呼び覚まし、その結果二度と伯爵となんぞ寝るもんかと少佐が結論づけたら?もし…?

! 大変だすごく気持ちいい。…これがクラウスなんだ。言い寄ってくる百人の男たちのいくらでも替わりのある肉体ではなく、クラウスなんだ。私の少佐、私の、唯一の、気短で癇癪持ちの、美しい人・・・

彼は震える手で愛しい相手の腿と下腹部を撫でた。そして自分の体を動かさないように注意を払いながら、少佐のそそり立つものを片方の掌に収めてしっかりと包み込み、しごきはじめた。少佐の顔に浮かぶ表情は読みとれなかった。痛みを覚えているのか、そうでないのかもわからなかった。リスクは避けたかったが、うまくゆけばクラウスのためにもなるはずだった。彼ははクラウスが自分を繰り返し訪れるように仕向けたかった。自分が知るあらゆる方法でクラウスと愛を紡ぎたかった。そしてクラウスと共にさらに学びたかった。

「愛しているよ、少佐。」彼はそう優しく告げて、相手の瞳がしかと計りがたい感情に曇るのをみつめた。怒りではなさそうだったが、当たらずとも遠からずといった風情だった。

もはやことを始めるべき時だった。彼がわずかに体を引くと、クラウスの下腹部の筋肉がたちまち緊張するのが感ぜられた。それは下腹部の皮膚に完全な形で盛り上がった。ああ。これほど完璧な肉体を持つ男がそれにまさるとも劣らぬ美貌を持ち、なおかつそれを他者に指摘されて信用せずに怒り出すなどということがなぜあるのだろう。このへそ周りの筋肉だけでも素晴らしい。脚だけでも。踵ですら。肘でさえ…、どの部分をとっても完璧じゃないか…

わずかに突き、それから引いた。少佐は落ち着きを失わなかった。もうすこし深く探ってみた。そしてそこにとどまり、クラウスの体の中の感覚に思わず我を忘れそうになった。それは暖かく、きつく彼を締めあげていた。胸の鼓動に合わせて微かな脈動を打ちながら、なお伯爵を迎え入れようとしていた…

伯爵は握りしてめいた少佐のものから手を話し、両手で少佐の腰をしっかりと掴んで本格的な動きに入った。どこをどう突くべきか、角度と強さを考慮するだけの余裕が残されていたのは幸いだった。だが伯爵がその目論見の通りの場所を攻めたとき、少佐は引きつったような息切れとともに体を固くし、完全な輪郭を持つ下腹部の筋肉がなめらかに震えた。その震えは全身に伝わり、少佐は背を弓なりにして為す術もなく耐えた。

その少佐の反応が、伯爵に残されたなけなしの理性を吹き飛ばした。その後のことはよく覚えてない。熱い肉体の下にまた熱い肉体が重なり、目の眩むような光景が前にあっただけだ。汗に濡れた、なめらかで完璧な少佐の肉体が伯爵自身の無我夢中な動きにぴったりと体を添わせ、ついに快楽へと目覚めて喘ぎながら蠢いていた。体と体が融け合い、その境界すら定かではなかった。情熱と欲望の小さな叫びが彼の口から漏れた。そして伯爵は少佐を打ち続けた。これだけの欲望を初めて感じさせた唯一の男に向かって、腰を打ち続けた。そしてついにその腰に少佐の脚が巻き付き、奥底に燃えさかる炎を秘めた緑の目に見つめられるまま耐えきれず、激しい炎のような絶頂を迎えた瞬間に伯爵は再び悟った。だがそれは完全に新たな驚くべき発見だった。それは骨の髄まで震えるような恐れ、我を忘れて取り乱してしまいそうになるほどの、怖れだったのである。

人を愛することがこういうことだと、伯爵はこれまで知らずにいた。愛することがこれほど・・・、畏れに満ちたものだと。数えきれないほどの情事を経ながら、なぜこれほどまでに恐ろしく、身体の震えるような想いをしたことがなかったのだろう。そしてなぜ少佐に心を奪われた瞬間に、そのことに気づかなかったのだろう。少佐はたやすく簡単に愛を交わすべき男などではない。彼は性愛の相手のすべてを呑み込み、束縛し、激しい情熱に満ちた痛みで相手を拘束する、そういう男だ・・・

少佐の体を這いまわっていた伯爵の掌が少佐の下腹部に暖かく湿ったぬめりを捉え、心臓が、悦びのための器官と同じ激しさにはじけた。彼は体を倒し、あらゆる角度から舌を絡めて深い口づけを交わした。まるでキスもまた性交そのものであるかのように。

唇を引き離したくなかった。背を丸めて少佐の腕の中で眠りに落ちることを許されればと願いながら、その可能性は殆ど無いことを自覚してもいた。ならばせめて、唇だけでも触れ合っていたかった。少佐の肉体から引き離され、何事もなかったかのようにお互いに身支度を整えたくなかった。ついに訪れたこの満たされたはかない刹那を破る、すべてのことを恐れた。この瞬間が指の間からこぼれてしまえば、次に何が起こってもおかしくはない。このまま永遠になにも起こらずにいてくれ。この瞬間をわたしに許してくれ。今だけは。ついに彼を手にいれ、私のベッドに引き込み、彼が私の手と唇に温かくしなやかに応じているこの今だけは…。

  
 
 
 

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