このサイトでは、「エロイカより愛をこめて(From Eroica with Love)」を題材とした、英語での厖大な二次創作群を翻訳しています。サイト管理者には原作者の著作権を侵害する意図は全く無く、またこのサイトにより金銭的な利益を享受するものでもありません。私が享受するのは、Guilty Pleasure - 疚しい楽しみ-だけです。「エ ロイカより愛をこめて」は青池保子氏による漫画作品であり、著作権は青池氏に帰属します。私たちファンはおのおのが、登場人物たちが自分のものだったらいいなと夢想 していますが、残念ながらそうではありません。ただ美しい夢をお借りしているのみです。

2012/07/16

Peripeteia 06 - by Sylvia






By the Pen - Peripeteia
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唐突に激しく問い詰められ、ドリアンは思わず半歩退いた。「ええと・・・、ひとつはっきり言えるのは、きみにはある種の美が備わっているから、ということかな、少佐。」


少佐は口を噤んだ。いくばくかなりとも意味のある答えだと判断したようだった。彼は目を細めてドリアンをねめつけた。ドリアンには、少佐の頭の中で思考の車輪がぐるぐる回転しているのが見えるような気がした。「では、おまえのような男が『美しい』と感じる何かを少しでも減らすには、どうすればいいのか教えろ。髪を切るべきなのか?ヒゲか?瓶底メガネか?もっと妙な訛りで喋ればいいのか?何をすればいい?」


少佐の口調におぞましいほどの嫌悪を感じ、ドリアンはいたたまれなくなった。少佐は『美しい』という単語を、汚いものののように吐き捨てた。


「美しくないきみなんて不可能だ。」ドリアンは短く答えた。「どうしてそんなに嫌がるんだい?悪い意味じゃないだろ。」


「ああ、なるほど。ではおれは自分の『美しい』見た目とやらに感謝すべきなんだろうな。この見てくれのせいで虫唾が走るような目にばかりあう。おぞましい変態ばかりが寄って来やがる。変質者ども、おまえのような連中ばかりだ。おれはこの顔に外科手術でも施したほうがいいのかもしれん。」


どう答えていいのかドリアンにはわからず、ただ口をつぐんだままでいた。少佐は明らかに苛々と動揺した様子で部屋の中をうろうろ歩き回った。そしてとうとうドリアンの前で立ち止まり、ほとんど体と体が付かんばかりに詰め寄った。ドリアンには少佐の体から立ち上る微かな体臭をかいだ。同時に、怒りと不満がない混ぜになった体温すらも感じ取れた。感情をむき出しにした、なまのクラウス。不可抗力な魅力だった。


素晴らしい。不満すらこの男が浮かべればセクシーだ。


「もう少しマシなことに脳みそを使おうとは考えんのか?無駄にもほどがある!成功するはずのない目的のために、おまえがつぎ込んだ時間と労力を考えてみろ!なぜだ?何を考えとるんだおまえは?同じような嗜好の相手を狙っとるならそれなりの結果が期待できるかもしれんだろうが、それにしても手間が全く割に合っとらんだろうが。どうしてそう馬鹿げたことばかり仕出かす?目を開けてよく見てみろ。一体全体おれが・・・」


「わかってない振りはやめろよ。きみをわたしのベッドに引きずり込むためなら、代償は厭わないさ。」ドリアンはほとんど考える暇もなくそう口に出し、ほとんど同時にぴしゃりと口を閉じて舌を噛んだ。今行った言葉が少佐の耳に届く前に、引っつかんで取り戻したかった。


短期で癇癪持ちの少佐に向かって、愛についてまともに語るのが得策だとはもちろん考えていなかった。どれほど愛しているかと伝えるだけですら良からぬ結果は明らかなのに、きみを渇望してるなどと告げた日には、少佐の爆発は避けられそうになかった。クラウスはすぐに度を失って激怒する男だったし、この話題に関して少佐の導火線が特に短いことも、ドリアンはとっくにわきまえていた。


クラウスはドリアンを凝視した。視線は冷たかったが、ひどく取り乱しているようにも見えた。固く引き結ばれたくちびるが、官能的な弧を描く口元を全く台無しにしていた。目の前の愛しい相手が、先に自分を殴りつけてから怒号を放つつもりのかそれともその逆の順なのか、ドリアンはふと訝しんだ。そして訝しみながらこうも考えた。どっちから始めるつもりにせよ、ずいぶん長く…


ほかの誰であれ、これがきっかけになるなどとは思い付きもしないにちがいない。だがドリアンが少佐を標的に定めてからもう何年もたっていた。いついかなる瞬間も、ほとんど存在するとも思えないその可能性だけに狙いを定めて彼を見ていた。ドリアンがクラウスに見たと考えた揺らぎや、彼がこの手に落ちるかもしれないという希望は、ひょっとするとドリアンの過剰すぎる自信がが見せた幻に過ぎないなのかもしれなかった。、だが今、クラウスは拒否の意思を即座の暴力では表さなかった。それはクラウスには似つかわしくなかった。とすれば、これは常ならぬ形を取った承諾・・・なのかもしれない。


ドリアンはそれ以上の思考に時間を費やすことなく、ただ少佐に向かって身を投げた。両腕で相手の首を包み込み、体を寄り添わせた。クラウスはそれを振り払おうとした拍子に膝の裏をベッドに打ちつけて寝具の上に仰向けに倒れこみ、ドリアンの体にしっかりと押さえつけられた。怒鳴り声を上げようと開き、息を吸い込もうとした少佐の唇はそのままドリアンの唇にふさがれた。ドリアンはクラウスを拘束する力を緩めなかった。これが長続きするはずはないと知っていた。ならば、このあらゆる瞬間を最大限に享受せねばなるまい。


ドリアンの下で、クラウスの唇は柔らかく暖かかった。舌を、できうる限り奥底まで挿し込みながら、ドリアンはようやく盗み取ったこのかつてない喜びに、ほとんどめまいすら覚えた。少佐は微かな煙草の匂いがした。だが少佐自身の香りがそれに勝っていた。そしてドリアンが密かに恐れ、なるべく考えまいとしていたのとは裏腹に、少佐は噛み付いてきたりはしなかった。角度を変えてもう一度挑むために、唇を一瞬離すという危険を冒したときでさえ。舌を抜き差しし、じらし、あらゆる方法を駆使してクラウスを挑発したときでさえ。クラウスはいかなる反応も示さなかった。だが抵抗しようともしなかった。いかなる動揺もなかった。だがいつか、たぶんもうすぐ、きっとすぐ、今にも・・・


「きみが欲しい。」伯爵はとうとう頭を上げてそう囁いた。そして口元を少佐の首筋に埋めた。絹のような烏の濡れ羽色の髪が、枕に乱れていた。「きみは素晴らしすぎる。」


彼の下の肉体が微かに震え、体を硬くした。体中の筋肉が岩のように硬く満ちた。ドリアンは、クラウスの胸が息を一杯に吸って膨らむのを感じた。両手がドリアンの肩を掴み、打撲のあざの残る拳が硬く握り締められた。ドリアンに残された時間はわずかしかなさそうだった。クラウスは体の向きを変えようとしていた。ドリアンを押しのけようとしているのは明らかだった。だがその動きはぎこちなく、むしろためらっているかのようにさえ見えた。彼本来の、攻撃的な力強さはひとかけらもなかった。


伯爵は少佐の体の動きに気づき、それから自分の下に横たわる男がどれほど力強く壮大で優美な創造物かということにあらためて心打たれた。少佐は何事につけ堅苦しすぎたし、性的な事項をことさらに避けようとする潔癖さを持ち合わせていた。それでもなお、彼はこんな風に滑らかに身を翻すことができるのだった。彼は流れる水のように身をひねった。足音を忍ばせた獣のように動いた。まさに黒豹のように。緑の目の、艶のある毛皮の、美しく致命的な、制御された優美さと抑制された暴力を二つながらにその身に秘めた獣のように・・・、ああ、かみそりのような牙と研ぎ澄まされた鋼鉄の美よ。


自分の体が反応していることにドリアンが気づいたのは、しばらくたってからのことだ。痛みを覚えるほどに硬くなり、脈動を打っていた。いま自分が組み敷いている美しい生き物への、燃え盛るような欲望を消すことはできそうになかった。少佐は体をひねろうとしていた。ドリアンは体位の利を逃さなかった。太腿の間のわずかな隙間に’むりやり下半身をねじ込み、少佐の脚を開かせてそこに居座った。


少佐の香りと味を唇と歯で享受しながら、力を込めて抑えつけた。硬くなったものを相手の同じ場所に合わせ、こすりつけた。理性が完全に吹っ飛んでいなかったなら、もう少し慎み深いやり方でことを進めようとしただろう。だがここまで来てしまったら、恋焦がれてきた少佐に触れ、味わい、撫でまわす自分を止めるのは不可能だった。いまやクラウスの肉体はドリアンの下で祝祭の饗宴のごとく準備されたも同然だった。彼はかつてないほど緊張しつつも静止したままなんらの抵抗を見せず、ドリアンの愛撫に抗わなかった…


クラウスの両手は伯爵の肩をがっしりと掴んだままだったが、その手はついに伯爵の体を押しのけようとはしなかった。だからドリアンは思いのままに動いた。少佐のタキシードのドレスシャツに手を掛け容赦なく縦に引き裂くと、前を開きながら下半身まで引きずり下ろした。


クラウスは微かに呻いた。謎めいた響きだった。それは怒りではなく、欲望でもなければ、全き苦痛の呻きでもなかった。だがともかくそれはドリアンを完全に魅了した。


「きみの嫌がることはしない。ただきみと分かち合いたいんだ。そう、こんなふうに、」


クラウスは目を閉じて顔を逸らせ、枕に横顔をうずめた。歯を食いしばり、唇を引き結んでいた。完全な彫刻のような横顔だった。だが彼はまるで激痛に耐えているかのように見えた。


何が起こりつつあるのかを、ドリアンが完全に理解していたと言えば嘘になるだろう。だが躊躇はしなかった。彼には充分にわかっていた。難攻不落の少佐が、自分の腕の中で陥落しつつある。正鵠を射るための、唯一の正しい瞬間を、彼はついに捉えたのだ。


そう、だから彼を逃してはならない。あと数分、あと半時間でも続けばいい。ああ、この瞬間が生きている限り続けば・・・


棉の下着は肌とともに温かく、微かに少佐の移り香があった。ドリアンは布地の上から片方の乳首を舐め、歯を立てた。その間にも両手はシャツの残骸を引きずり出し、そのまま下半身を覆う布の中に滑り込み、また上がって胸をなでた。熱を帯びたたくましい肉体を包む滑らかな肌、そしてその下の見事な筋肉。酔いしれてしまいそうだった。抗うことなどできそうにもない。


そしてついにベルトの金具が外れた。伯爵の指は震えていたが、なお巧みだった。指先が一番内側まで滑り込んだ。意外なほどに柔らかな巻き毛が指を迎え、その奥にほんの少しだけ硬くなったそれがあった。


「きみに触れたかった。」伯爵はこらえきれずにもう一度ささやいた。そしてそのささやきのせいで、ほかでもない自分自身に押し寄せた感情の波にうろたえた。少佐は完璧だった。その完璧さに厳粛な畏怖すら覚えた。ドリアンの内に、炎のようにきらめきながら燃えさかる、押さえようのない欲望がわきあがった。


少佐のその周囲を掌でゆっくりと包み込み、試すように愛撫した。クラウスはこれ以上なく硬く体を強張らせていて、ドリアンは少佐が痙攣でも起こしやしないかとひやひやした。だがクラウスのその部分は伯爵の愛撫にゆっくりと、だが確かに応え始めていた。クラウスを一糸まとわぬ姿にひん剥いてもっと徹底的な愛撫を与え、隅から隅までくまなく探求したい、ドリアンはちらりとそう考えたが、それは次回までのお預けにしたほうがよさそうだった。この機会をふいにするわけには行かなかった。いかなる意味でも。たとえルーブル美術館のすべての収蔵品と引き換えるという申し出があったとしても。


少佐は堪えきれずに息を吐き、うめき声ともせつなげなあえぎともつかない小さな声を漏らした。


すべてがあまりにも突然で唐突すぎたし、少佐の陥落のなりゆきもまた伯爵があらかじめ想定していたとおりではなかった。だがドリアンは下らぬ詮索に時間を費やさなかった。イノシシ並みに頑固で一徹なクラウスがついに落ちたのだ。これほ単純で自然な欲望を、無理に捻じ曲げて複雑にするばかりだったクラウスが落ちたのだ。味気ない任務を何物にも優先させるクラウスが…。だがこれからは、ドリアンこそがクラウスを悦ばしきすべてへと導くのだ。それにはいくらかの時間が必要だろう。なにしろ彼は鉄のクラウスなのだ。クラウスはまだ彼本来のセクシュアリティと人間的な希求に抵抗している。だがドリアンなら、人生には冷たい任務や厳しいだけの訓練以上に意味のある何かがあることを示してやれる。
  
ずっときみが欲しかったんだ。こうしたかったんだ。きみを一目見たときか、ずっと…。そう声に出して呟いていたかもしれなかった、もし唇と舌がいまやはっきりと聳え立ったその場所を愛撫していなかったら。舌と唇での愛撫なら、今まで数限りなくこなしてきた。だがこれはちがっていた。愛撫を受けている相手の感覚がまるで自分自身の感覚であるかのように、手に取るように感じられた。そう、あたかも二人の体が完全に一つであるかのように。


そしてクラウスは声を出さずにいった。ドリアンが考えていたとおりだった。私の名を呼ばせるまでには、まだまだ時間がかかりそうだな。ドリアンはそう考えつつ、その日を心待ちにする事にした。とはいえ、クラウスがいずれどんなふうに声を出すのかちょっと想像すらつかなかったのだが。それでもなお、ドリアンはその日が来ることを確信していた。手に入れられなかったものなど、今まで何一つ無かったのだから。


クラウスの両足の間で彼はかすかに微笑み、それから顔を上げた。


「きみは素晴らしいよ。」伯爵の声は欲望に低くかすれていた。少佐の口元がびくりと動いた。体から鎖骨、首すじ、耳元へと、ドリアンの舌と指が体に沿って登るあいだも、クラウスは身動きひとつしなかった。


オーガズムがクラウスの緊張を幾分かは緩和していた。だがドリアンが自分のファスナーを下げる音を聞きつけ、彼の神経はは再びぴんと張り詰めた。


「さあ、」伯爵は耳元でささやいた。「私に触れてくれ。」




 
 
<続く>
 
 
 

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