By the Pen - Peripeteia
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スー
プ、サラダそれからデザートが、ダイニングホール両脇の長いビュッフェテーブルの上に恭しく用意された。しかし、だがメインディッシュがまだだった。それ
からもちろん、飲み物は頻繁に補充されねばならなお。さらに使用済みの皿とグラスを遅滞無く持ち去り、新しいものを追加する。
婚
礼客の最後のメンバーが自分の分を平らげてしまった頃に、別の早い客たちは次のスープや小さなケーキやパイにとりかかっていた。可愛らしいサイズのチョコ
レートムースもあった。ウェイター!トマトのカクテルがもうないってどういうこと?それから、十分前に頼んだワインはどうなってるの?
泥棒から足を洗って正業につくとすれば、選択肢のリストの最後の職業がウェイターだろう。
て
んてこ舞いの状況がようやくましになり、一人ぐらい欠けてもすぐには困らない状況まで落ち着いたときに彼はこっそり抜け出して、もうすぐロンドンの自分の
寝室に架け替えられる運命である、あの絵をもう一度じっくり眺めるために、絵画をおいた部屋へ忍び込んだ。どの位置にかけるかはまだ決めていなかった。暖
炉の上か、それとも東側の窓の間か。絵が手元に到着したら、しばらくそれに夢中になることはわかりきっていた。
ド
リアンは、ティリアンと同時代に生きてみたたかったなと考えた。悲惨な衛生状態や快適な生活の基本的な欠如はとりあえず置くことにして。その人物に関して
の言い伝えには事欠かなかった。彼は悪辣な暴君で、粗野的で執念深く、野心に満ちた快楽主義者でもあり、衝動的な性格ではあるがカリスマ性を持ち、躊躇や
限界などといったものを全く持ち合わせない人物だった。その人物について調べることは興味深くもあり、数世紀も離れた現在という安全な高みからしか知るこ
とのできない歯がゆさもあった。そしてドリアンは全くのところ、彼と同時代に生き、肩を並べてみたかったとしみじみ思わざるを得なかったのである。
お
めでたい考えだね。彼は自分で自分を笑った。火遊びばかりして、大やけどをする危険さをいつまでたっても学ばない。それにきっとティリアンは私を焼き尽く
すよ。ティリアンは近づくものすべてを焼き尽くす個性だったに違いない。彼の目にとまるすべての者たちを。だがドリアンはその種の魅力には抗えないほう
だった。無情であり無謀である、恐れ知らずなきらめき。もちろんそれらすべてが、あの人を魅了してやまない美しい表情とともにある。そして肖像画家はその
きらめきを完全にキャンバスに閉じ込めていた。ドリアンはそれをその絵の表情から、余すところなく見て取ることができた。
ああ、呪うべきほどの魅力をたたえた、かの絵よ。
彼は空想に夢中になるあまり、その部屋に忍び込む前に周囲を注意深くい観察するのを怠った。基本的な注意事項だな。嘲るような声がした。その声は、軽蔑を隠そうとしないときの少佐の声にそっくりだった。
彼は凍りついたまま動けなかった。変装がばれたかと考えた。
クラウスの表情に表れた鋭い疑いの表情はすぐに消え、無関心な表情に戻った。頭と肩が柱の陰に消えた。薄い漂う煙草の煙が、彼がそこにいることを証明していた。
「紫
を着る男」をゆっくり鑑賞するどころではなかった。「紫を着る男」の子孫をじっくり眺めるどころでもなかった。だが、クラウスはどの絵を眺めていたのだろ
う?きっと見るべき価値のある絵に違いない。少佐のお気に入りなのかもしれない。だとすれば、ついでにそちらも頂いてしまうという手もある。
ふー
ん、わりと最近の作だな。ドリアンはあっさり鑑定した。彼にはその能力があった。一人の女性が緋色の乗馬服を着て、銀で縁取りのある、羽根のついた赤い小
さな四角い帽子をかぶり、マホガニーの木の芸術的なまでにねじれた枝に浅く腰掛けていた。背景の右側のほとんどの部分を占めている馬は、野生の目と血の色
の鼻腔を持つ漆黒の巨大なけだものだった。背景の左部分は田園風景で、遠くにエーベルバッハ城が聳えていた。
そ
の絵の水準は、平均かやや上といったところだった。女性はまあ美しいといえたが、なぜか気鬱に満ちた表情だった。それは退屈や傲慢や満たされない欲望、そ
して悲痛といったものからきているのかもしれない。画家の技術がドリアンが鑑定したよりもずっと劣っているのでない限り、その女性は多分なにか難しい問題
を抱えていたに違いない。
ドリアンは少佐を覗き見するという危険を冒してみた。少佐がこちらを見ていないことが判った。彼はまた黙ってその絵に視線を戻していた。柱に背を預けて足を足首の辺りで軽く組み、ゆるく握った手に煙草を持って、これまで見たこともないほど気だるげな様子に見えた。
「こちらの女性はどなたなんでしょう?」ドリアンはドイツ語に細心の注意を払いながら尋ねてみた。答えが知りたいというよりは、好奇心に負けての発言だった。
少佐の応えにドリアンは驚いた。「クラウディア・ヘンリエッテ・フォン・デム・エーベルバッハだ。」
「つまり、お母上でいらっしゃる?」しまったと思うまもなく、その言葉が口から飛び出した。ドリアンは首をすくめた。猛烈に怒鳴られるに違いない。
「そうだ。」ドリアンの最愛の男は静かに答えた。「おれの母親だ。」
彼
らは黙ってその絵を見つめた。クラウスの母についてドリアンが知っていることといえば、彼女がクラウスがほんの幼少の頃に亡くなったということだけだっ
た。この絵を見る限り、彼女が幸福な人生を送ったとは言い難いようだった。エーベルバッハの一族の者は、みななんらかの意味で生きにくい事情を抱えている
ように見えた。人生を単純に楽しむすべを心得ているものはいないようだった。
そう、だからこれから学べばいい。
ドリアンは、クラウディア・ヘンリエッテが息子に彼女の面影を残していないか盗み見してみたが、何一つ見当たらなかった。驚くには当たらない。彼ははっきりと父親似であるのだから。
「それでだ、」少佐はしばしの沈黙の後に再び口を開いた。「なにを探しとる?銀の食器でも盗むつもりか。もっと価値のあるものが狙いか?」
もちろん、もっとずっと価値のあるものを狙ってるさ。生まれたままの姿のきみ。わたしのベッドで。わたしの腕の中で。わたしの名を叫びながら・・・・わたしのものになることをね。
「なんですって!」ドリアンは怒ったふりをして声を荒げた。「わたしがここに来たのは、あなたがどこかで具合でも悪くなさっていないか探すようにと、ある女性の方に頼まれたからなんですよ!それを、ひとを泥棒扱いなさるなんて!'わたしは自分の職務を全うしているだけなのに!」
少佐は柱から背を離して真っ直ぐに立ち、青い顔を装ったドリアンに向き直っていつもどおりの冷たい目つきで訊ねた。
「ほう、そうかね。どの女性だ?」
ドリアンはさっき見た花嫁の友人の外観を述べたが、彼の愛するエメラルドの目の中の疑いが少しでも解けたようには見えなかった。ディテールに満ちた説明にもかかわらず、少佐は明らかに信用していなかった。だがそれでも、少佐はほとんど興味を示さないままに使用人の言い訳を聞くだけ聞いていた。
ドリアンは、特大の青あざを付けられた自分が薄暗い地下室に放り込まれるところを想像した。
「ついて来い。」少佐はとうとう聞くのをやめ、窓際に置いてあった灰皿に煙草を押し付けた。そしてドリアンのそばを通り過ぎながら声をかけた。使用人なら命令に従うのが当然といった態度だった。なんらかの理由で、この使用人は少佐のファイルの中で「面倒ではあるが、たいした害の無い軽犯罪者」の項目に分類されたようだった。ドリアンはもちろん躊躇無しに少佐の後を追った。
「喜んで。」ドリアンは口の中でこっそりと呟いた。後姿の長い足に見とれていた。「どんなチャンスでも逃さないからね、わたしは!」
タキシードは体によくあった誂えだった。クラウスの正装は、この先数ヶ月間のドリアンのエロティックな夢の中に幾度となく登場するに違いない素晴らしさだった。だが欠点もあった。それは体を隠しすぎていた。特に、ドリアンが一番知りたいと願うあの箇所を。
たどりついたドアの前でドリアンが少佐の両脚および臀部の目視検査を渋々中断すると、彼はいつものように不信げに細められた鋭い眼光を浴びていることにふと気づいた。
見るな。考えることも許さん。この腐った変態が! ドリアンは胸の中でそう暗唱してみた。
少佐は深く息を吸い、それをゆっくりと吐き出す前に不満めいた立腹の息を鋭く吐いた。が、何も言わなかった。それから彼はドリアンを先に立たせ、階段を降り始めた。
「それでだ、」少佐はしばしの沈黙の後に再び口を開いた。「なにを探しとる?銀の食器でも盗むつもりか。もっと価値のあるものが狙いか?」
もちろん、もっとずっと価値のあるものを狙ってるさ。生まれたままの姿のきみ。わたしのベッドで。わたしの腕の中で。わたしの名を叫びながら・・・・わたしのものになることをね。
「なんですって!」ドリアンは怒ったふりをして声を荒げた。「わたしがここに来たのは、あなたがどこかで具合でも悪くなさっていないか探すようにと、ある女性の方に頼まれたからなんですよ!それを、ひとを泥棒扱いなさるなんて!'わたしは自分の職務を全うしているだけなのに!」
少佐は柱から背を離して真っ直ぐに立ち、青い顔を装ったドリアンに向き直っていつもどおりの冷たい目つきで訊ねた。
「ほう、そうかね。どの女性だ?」
ドリアンはさっき見た花嫁の友人の外観を述べたが、彼の愛するエメラルドの目の中の疑いが少しでも解けたようには見えなかった。ディテールに満ちた説明にもかかわらず、少佐は明らかに信用していなかった。だがそれでも、少佐はほとんど興味を示さないままに使用人の言い訳を聞くだけ聞いていた。
ドリアンは、特大の青あざを付けられた自分が薄暗い地下室に放り込まれるところを想像した。
「ついて来い。」少佐はとうとう聞くのをやめ、窓際に置いてあった灰皿に煙草を押し付けた。そしてドリアンのそばを通り過ぎながら声をかけた。使用人なら命令に従うのが当然といった態度だった。なんらかの理由で、この使用人は少佐のファイルの中で「面倒ではあるが、たいした害の無い軽犯罪者」の項目に分類されたようだった。ドリアンはもちろん躊躇無しに少佐の後を追った。
「喜んで。」ドリアンは口の中でこっそりと呟いた。後姿の長い足に見とれていた。「どんなチャンスでも逃さないからね、わたしは!」
タキシードは体によくあった誂えだった。クラウスの正装は、この先数ヶ月間のドリアンのエロティックな夢の中に幾度となく登場するに違いない素晴らしさだった。だが欠点もあった。それは体を隠しすぎていた。特に、ドリアンが一番知りたいと願うあの箇所を。
たどりついたドアの前でドリアンが少佐の両脚および臀部の目視検査を渋々中断すると、彼はいつものように不信げに細められた鋭い眼光を浴びていることにふと気づいた。
見るな。考えることも許さん。この腐った変態が! ドリアンは胸の中でそう暗唱してみた。
少佐は深く息を吸い、それをゆっくりと吐き出す前に不満めいた立腹の息を鋭く吐いた。が、何も言わなかった。それから彼はドリアンを先に立たせ、階段を降り始めた。
<続く>
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